lu

アイヒマン・ショー/歴史を写した男たちのluのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

視聴1回目 2020/5/1→2回目 2022/6/2

*・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*

"自分は他者より優秀に創られたと一度でも考えた者は、アイヒマンと同じ地平にいます。
そして一度でも鼻の形や肌の色や信仰する神の違いによって他者に悪意を抱いた者は、理性の喪失が狂気への道と知るべきです。
このようなことから全てが始まったのです。"

*・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*

1961年4月からイスラエルのエルサレムで行われたアイヒマン裁判を、製作陣の視点から当時の映像を挿入しながら描いた映画です。

アドルフ・アイヒマンとは第二次世界大戦中に"ユダヤ人問題の最終的解決"を中心になって進めたナチ将校です。
ニュルンベルク裁判において彼の上司のルドルフ・ヘスなどは裁かれましたが、アイヒマンはアルゼンチンへ逃亡し身を隠していました。しかし1960年5月11日に捕まり、イスラエルの最高裁で裁かれることになりました。

アイヒマン裁判はラジオで生中継され、世界中のテレビでも放映されました。
全112人の証人が収容所で行われた大量虐殺を証言し世界に衝撃を与えました。

アイヒマンはこの裁判で有罪を言い渡され、翌年の5月に絞首刑に処せられます。

*・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*

映画で描かれているこの裁判を世界へ配信したことの意義は、帰還したユダヤ人たちに過去を語る勇気を与えた点です。
それまで真実を話しても信じられないと相手にされていませんでしたが、この裁判の証言をきっかけに、人々がユダヤ人の経験に耳を傾けるようになったのです。

撮影陣が脅迫に耐えてでも撮り続けたことに永遠の価値を感じます。また、撮影陣の多くはユダヤ人でした。(証人が同時をフラッシュバックして失神し、搬送される場面もあるように)辛い過去を思い出す場でそれを記録することは、(ユダヤ人でなくとも)とても過酷なことだったと想像します。

【その他】
裁判の期間、監督が気晴らしにギリシャへドライブに行きます。そこでベドウィンという遊牧民が出てくるのですが、監督は、彼らには国境政府の概念はなく、誰とも敵対しないと話します。
近代国家の概念が人々を差別化しているのかもしれないと思いました。
また遊牧民でサーミを思い出しました。遊牧民はこの国境がある世界でどれほど国に関与されずに生活できているのか気になりました。
lu

lu