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ラ・ラ・ランドのkomblogのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.6
ほろ苦さのある青春映画。ただ歌って踊って楽しいだけだったら賞レースに絡まないだろう、と思っていたら、非常に硬軟入り乱れるというか、歌や踊りで表現する恋とシニカルな現実が入り乱れる作品だった。
エモーションの高鳴りを歌と踊りで表現する一般的なミュージカルの様式を保ちつつ、それに対して皮肉をその都度入れて来るのでクスッっと来るコメディ要素が強い。「春」とか入れて来るんだけど、LAには四季がないから絵変わりしないとかね。まー、実際はIndian summerがある秋がむしろ夏より暑いとか、冬は雨だとかあるんだけど…あと、主役の二人の恋が盛り上がったところでcliché的にそれを阻むアクシデントが起きるとか、そう言ったジョーク要素がケッコーあるんだけど、ここがどこまで日本で伝わるかは?
あと、主役の二人の恋が盛り上がり切った後のReality bitesな展開から徐々に音楽なども静かになっていくところがよりリアルな展開になって、そこが深みを生み出していると思う一方で、今日見た限りでは周りの席で座っている人が寝ちゃっていたので、そこは良し悪しなのかな、と。そういう意味で、歌って踊って楽しいな!だけを想定して見にきた人には若干期待外れなところもありえる気がする。
そして、監督の前作「セッション」のラストのカタルシスを想定した人には印象違うというところはあるかもしれない。でも、青春映画にあるべき、イニシエーション的な、大人として選択をすること、結果として選択されなかった未来の一つの可能性が閉じることを明示しながら、それでもというかその先にこそ青春で誰もが求めていた夢の実現、自己実現があるのだというビタースイートさを提示しているところにこの作品の深みがある気がする。
「セッション」や「Hacksaw Ridge」的な誰しもの溜飲を下げさせるファンタジー的なカタルシスはないかもしれないけど、「Manchester by the Sea」のような現実的な許しがあるというか、「これでよかったんだよね」という感覚がある点で賞レース向きな作品というか、「そして、父になる」ならぬ「そして、大人になる」的な。それでいて「Manchester by the Sea」にあった優しさだけではない、ある種の人生賛歌な作品だと思う。人生の辛い時に見返したい、Blu-rayが欲しい傑作っ!
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