なっこ

LION ライオン 25年目のただいまのなっこのレビュー・感想・評価

2.9
人生は旅に似ている。だから誰かの人生をギュッと凝縮して描く映画は、ロードムービーが一番相応しいと思う。
それにしてもこのstoryの主人公はなんて長く遠い旅をするのだろう、事実は小説よりも奇なりとはよく言ったもので、まさにこの作品のためにあるような言葉だ。

久しぶりに戸田奈津子さんの翻訳字幕。かつては、観る映画全て彼女の名前がクレジットされているのでは、と思える程の仕事ぶりで、映画に関わる仕事にいつか就けるのなら私は彼女のような仕事に就きたい、なんて夢見たものだ。

彼女の字幕は不思議と生の英語が聞こえてくる。スピードラーニングみたいなものなのだろうか、軽く意味をつかんでその後会話が聞こえてくる、だからふっと英語が英語のままでしっかりと耳に残る。
そんな不思議が起こるのはもしかしたら彼女の字幕で育った私だけなのかもしれないけれど。

自分のルーツが複雑な人間でなくても、ある時期にくれば、自分を探さなくてはいけなくなる。
サルーの感じる孤独を薄めていけば、それは、誰にでも覚えのある感情だ。

探し求めた答えのその向こうにあるものに、しっかりと抱きとめられた時の安堵感。私も人生の迷子にはなりたくないものだ。何よりも、ニコール・キッドマン演じる養母の生きる姿勢、その強さと美しさとそれを支える養父の優しさがとても素敵だった。こういう家族のあり方も、あって良いのだと思う。

迷子になった幼いサルーのハラハラする路上生活。その過酷さの中に今もいる子どもがいるのかと思うと、胸を締め付けられる。
そういう現実も、教えてくれる映画だった。
なっこ

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