Kay

LION ライオン 25年目のただいまのKayのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

心の中にずっと生き続けてきた、そしてこれからも生き続ける兄の姿。常にそこには兄がいて、誰よりもサルーを大事に思ってくれていた。その無条件な優しさと彼の戸惑い・焦り、サルーを心から心配し続けたが故に命を落としてしまった無慈悲な現実。彼が感じてたであろう想いを想像すると、筆舌に尽くしがたいほどとても哀しい。本当に生きていてほしかった。心の中で生き続けるだなんて綺麗事でなくて、本当に生きていてほしかった。その想い出が笑って共有できるものであってほしかった。
実に哀しい。だからこそサルーにはその分強く生きて欲しい。人との結びつきを大切にして欲しい。

もうひとつ。
「世界に人は溢れている。自分たちが子どもを持ったとしても幸せをもたらさない。一人でも不運な世界の子供をより良い環境で育てることの方がよほど意義がある。」この言葉はかなり胸に刺さった。ここまで視点を広げられる人に果たして自分はなれるのであろうか。

【以下、無機質な感想】
主人公サルーだけに焦点を当てたのではなく、行方不明になる子供の実態とその後の生々しい現実、養子を受け入れる豪の家族の想い、受け入れた後の現実…二時間という限られた時間の中で包括的な実態を表現しきっている。
音楽・カメラワーク・ストーリー構成全てにおいて心揺さぶられる質であった。
前半部分でインドでの日常や母・兄との結びつきを丁寧に描写していたからこそ後半部分のその過去を探し求める姿と現実とのギャップに苦しむ姿にここを打たれたのだと思う。兄との他愛もない日常。ところどころ挿入される兄・母のカットシーンも常に彼の心の一番深いところにその思い出が刻み込まれているのだと感じられるものであった。
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