・ジャンル
オカルトホラー/ダークファンタジー
・あらすじ
郊外の街に暮らす女子大生のジェイミー
彼女は妹ケリーや幼馴染達と平穏な日々を送っていた
ある日、恋人のヒューとデートの帰りに初めての関係を持ったその時までは…
行為が終わると彼は突如として彼女を気絶させて拉致
目覚めると彼女は服を脱がされ拘束されていた
そしてヒューは俄かに信じ難い話を語り始める
彼は謎の存在に追われ続けており、セックスによってそれを彼女に移したのだと
“それ“は姿を自在に変え、ゆっくりと歩き追ってくるが賢く”感染“した物を殺しにやってくる
君が死ねばまた自分に戻ってくる、と…
何が何だか分からぬまま解放されたジェイミー
そして彼の言った通り”それ“は彼女に付き纏う様になり…
・感想
セックスによって”感染“し、他者に移さなければ殺すまで追ってくるという怪異の恐怖を描いた有名ホラー作品
以前から気になってはいたので鑑賞
アメリカンホラーらしからぬ抑制された作風、モンスターじみた姿ではなく人の形で現れ自在に姿を変える怪異、それによってどれが人間か即座に判断出来なくなる恐怖…
どれもなかなか秀逸でJホラーとはまた一味違ったジワジワと追い詰めてくる表現が最後まで続いていく様がなかなかに魅力的だった
感染者にしか姿は見えないが確かな実体を持ち、触れたり攻撃する事は誰でも互いに可能であるという設定もジェイミーと未感染の友人達が恐怖を共有出来ないが存在は確認出来るという状況を生み出す様も秀逸(特にビーチでの遭遇やプールでのクライマックスに顕著)
正体が分からない怪異に冒されていく様子は黒沢清監督の「回路」などが好きな人にも刺さるかも?
問題はこの怪異を通して何が表現されているのか?という事
これをボーッと観てると見過ごしてしまいそうな台詞などから推測すると怪異は忘れ去られた死者達であり、現代社会において快楽が主の目的と化したセックスの本来の意義を象徴しているのかな?と個人的には推測
そう感じたのは講義のシーンで朗読される”ラザロ“の話やジェイミーの妹であるケリーが終盤に病室で読み上げる「最大の苦痛は死は避けられないのだと知る事」という本の一節などから
生を授けるセックスによって死の観念が焼き付けられていく、というのも死生観として面白かった
若さは永遠ではないし安全は幻想である、という人生その物の恐ろしさを上手く表現していた様に思う
<ここからネタバレ含む>
惜しかった点は自在に姿を変える怪異が冒頭で既に「知人かもしれないし他人かもしれない」と語られていたのに友人や家族に対する疑心暗鬼の場面がまるで見られなかった点
ジェイミーは恋人ヒュー(ジェフ)に感染させられ、それを性に奔放で怪異を信じないグレッグに移す
そしてグレッグは殺され、今度は彼女に思いを寄せるポールが自ら志願し移される
ここの三角関係がこじれたらより面白そうだったのでそれが無かったのが残念
ただそれに関しては本来、肉体関係を持つという事は想い合う仲でする事であり恋愛とは恐怖も含めて様々な物を共有する物である、と示す為だったかもしれないので許容範囲ではある
でもせっかく女友達や妹等もいたのだからそれをもっと活かしても良かったかな…
あとは本物と思っていた相手が怪異の化けた姿だった、という展開も欲しかった所
こういった惜しかったいくつかの点を除けば良く出来た作品だし静かに展開していきジャンプスケアにも依存していないのでなかなか好きな内容だった
「They Follow」というタイトルで続編の製作が決定しているそうなのでそちらがどうなるかも楽しみ
ポールが多分、娼婦に移していたっぽいのでそれが起点になるんだろうか?