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アンナと過ごした4日間のharunomaのレビュー・感想・評価

アンナと過ごした4日間(2008年製作の映画)
5.0
非常に雑駁な議論になるが「愛の不可能性」ということだけ言うなら、『接吻』への最良の解答として『アンナと過ごした4日間』はある。『アカルイミライ』『サッドヴァケーション』『接吻』とここ数年の面会室における切り返しの問題にも、対面する(=主体として切り返される)ときには、窓もガラスも柵もなく、あっけなくあり得ない二人の人物が主体として画面におさまってしまう。
『接吻』において坂口が「誰かの宛先」としての自分を意識して泣き崩れるよりも、アンナが、贈られる指輪を抱いて眠る台風の夜の通過儀礼の方が、われわれには真に重要なことだ。そしてまた壁を見つめること。視線はもはや、フィルター(窓、望遠鏡=レンズ)を通すことも、曇天の濁りに混じることも、火を焼べることもない。つまりは切り返されず、見通すこともままならずに、ただ立ち尽くすだけだ。私たちは今から壁を撮らなければならない。九十四分間、全ショット泣ける傑作。これが当時、黎明期のデジタルで撮られていたこともまた驚くべきところだ。劇場で七回は観たはずだが、まったく足りない。
祖母の葬式の雨の夜に家財を燃やした後、一人アコーディオンを弾くレオンの後ろの窓に、残り火とそこから立ち上がる煙を絶やさずに画面におさめているだけでも、スコリモの確かな力量を見ずにはいられない。

♯801
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