クロサキ

ピートと秘密の友達のクロサキのネタバレレビュー・内容・結末

ピートと秘密の友達(2016年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

オリジナルである『ピートとドラゴン』は未見。

とてもとても丁寧に作られた良作である。
「家族」「迷子」「北極星(コンパス)」などなど、
作中のあらゆる要素が相似形となって絡み合い、有機的に物語を語っている。
個人的に一番泣けたのが、出会いと別れのシーンの両方で映し出された、エリオットのある仕草。
あの毛むくじゃらの大きな手で優しく絵本を差し出すエリオット。冒頭の出会いで二人が打ち解けるきっかけとなったあの仕草が、ラストの別れではピートに新しい「家族」を与えるために、ふたたび繰り返される……これぞ映画!と言うべき見事な映像的反復である。
(厳密に言うと、冒頭では絵本の入ったリュックですが)

映像に関しては、ディズニー製作にもかかわらずCGのアラが散見された。今作はほとんどのシーンがナチュラルなライティングで撮られているから、ある程度実写と浮き上がってしまうのはしょうがないかもしれないが。とはいえ、十分に説得力のある映像だし、エリオットの表情などは素晴らしい。役者陣の好演も大きいだろう。

ただ、そういった美点というのは「わかりやすい上手さ」でもある。
今作には「なんだかわかんないけどグッときた&鳥肌が立った」シーンがいくつかあった。
(個人的に陽光をはじめとした木漏れ日の画が大好きなので、単にフェチズムを刺激されただけかもしれないれどもw)
監督のデヴィッド・ロウリー、日本での公開作が少ないのでノーマークだったけれど、かなりの天才かもしれない。
アクションシーンがもたついていたことと、飛行シーンの撮り方が『ヒックとドラゴン』とだいぶ被っていたことは気になったが、次回作の『A Ghost Story』が批評家に絶賛されているので、大いに期待している。早く観たい!


でもラストシーンはちょっと違和感があった。
少年の「これまで」と「これから」の物語を語るロバート・レッドフォードのナレーションは良いし、伏線を回収する形で二人が再会するのも良い。
でも、エリオットの「家族」を、ああいう形で登場させて欲しくなかったなぁ……観客ゆえの、ロマンの残酷な押し付けかもしれないけど、彼にはまだ「迷子」でいてほしかった。
クロサキ

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