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666号室のmanamiのレビュー・感想・評価

666号室(1982年製作の映画)
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1982年のカンヌ国際映画祭期間中に撮影されたドキュメンタリー。どこかのホテルの一室らしきところ(ここが666号室なのかな?)に、15人の映画監督が入れ替わり立ち替わり現れる。そして映画の現状と未来に危機感を抱いたヴィム・ヴェンダース監督からの、「映画は死に瀕した芸術か」という質問状に対する意見をカメラの前で、一人っきりで述べる。
「他の映画を模倣した映画が増えている」「テレビ向けに作ったような映画が増えた」「小品が作られず、規模の大きな映画ばかりになっている」「映画人は私生活を大切にしていない」「映画ではなく映画人が死に瀕しているのではないか」「万人受けする映画を作るなんて不可能だ」などなど。
まるで映画論のプライベートレッスンを受けているかのよう。
中でも印象に残ったのはまず、スティーブンスピルバーグ監督の話。自分が恐れているのは製作費の高騰だと語っていて、彼ほどの地位にいても怖いのはそこなのかと驚かされる。でもまあ確かに、製作費をカットされても作品の質は落とせない、それを言い訳にできない、というのは、実績ある監督だからこそより強く感じることなんだろうなと、妙に納得もできる。
それに逆に言うと、スピルバーグが心配しているのはそういった外的要因であって、自身の才能の枯渇だとか、老いからくる世間とのズレとか、そんなことではないのかとも考えてみたり。
最後に「出演」するのは、「政府から身柄引渡しを求められているため、この場に出て来られない」というトルコ人監督。他とは違うスタイルで出演し、彼にしか伝えられないであろうメッセージを届けてくれる。
どんな作品か知らずに観たけど、映画を愛するがゆえの批判的見解も含め、「映画納め」にふさわしい映画だった。

たくさんの映画たち、今年もどうもありがとう。

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