テロメア

東京無国籍少女のテロメアのネタバレレビュー・内容・結末

東京無国籍少女(2015年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

これはアニメシリーズでの中間くらいにある話数の一つ、何かしらのアクシデントで意識不明になり、夢のなかで自らを再定義(あるいは己を再発見)する話数だけを一つの映画にした感じである。

結論から言おう、面白くない。

僕は押井守監督のめちゃファンで、人生の一番は『イノセンス』だと言うごりごりのファンだ。しかし、ダメなものはダメ。今作の制作意図は何かはわからないが、目覚めたあとの戦場的な世界観の方をメインにしてほしかった。アート映画としているなら、美しさが不足しているし、何より間伸び=アートではない(そもそもアート映画だって面白い)。押井守監督はアニメだと切るのが上手いのに、実写だと下手なのはなぜだろうか、謎。

この手の映画で一本観せようと思うと、もっと入れ子細工にしないとダメだろうと思う。まず、飽きる。このアートっぽい学校風景と、戦場な学校と、あとアートとは対照的な現実っぽい学校風景の三つくらいを重ねた演出で撮っていけば、観ている方もどれが夢で妄想で現実なのか、と迷わせることができるだろう。つまり、飽きにくい(かなり編集の腕によるけど)。で、最後はどれが現実だったかという余韻を残して終われば、考察映画として成れたと思う。

でも、そもそも押井守監督は考察映画を撮る監督ではなく娯楽監督だ。難解と言われている『イノセンス』だって、物語の骨子は事件を追う刑事物だし。押井守映画は基本的に骨子はシンプルで、その肉付けが巧みでシンプルなのに複雑に見えてそれを紐解くのが最高。なのに、今作は骨子も肉付けもシンプルだからなんのこっちゃ、と。

ラストシーンのアクションも園村健介監督(『HYDRA』の監督で、最近だと『ベイビーわるきゅーれ』のアクション監督)であるから、特にこの時期の邦画としてはいい。けれど、アクション好きだともっとやってほしいと思う。痒い所に手が届かない感じなのが残念。

総じてイマイチな映画。押井守監督か、園村健介監督のファンでないと観る理由すらないだろうし。押井守監督は実写映画を撮るときは、何かしらの実験も兼ねているとはどこかで読んだか聞いたことがあるけれど、それでも最低限、ごりごりのファンが盲目的にであろうとも推せるくらいのクオリティがほしい、と切に思う。いや、切に願う。
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