あんバター

最愛の子のあんバターのネタバレレビュー・内容・結末

最愛の子(2014年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

アプリにおすすめされて 何の事前情報も得ないまま出会ってしまった映画。久しぶりに胸が苦しくなった。

(レビュー後半に2度目のレビュー有り)

【レビュー①】
別れた夫とのいわゆる面会中に最愛の子が誘拐された元妻、ほんのちょっと目を離した自分を責める元夫。
死にものぐるいで息子を捜索するも人身売買の横行する中、親の心情につけこむような詐欺も。

行方不明の家族会で同じ経験をしている人たちとの痛みを分かち合い、励まし合う時間。

拾ってきた子供を我が子のように育ててきた女。それを母だと思って育ってしまった息子。やっと取り戻したと思ったのに「ママのところへ帰りたい」と泣かれる本当の母。
再婚した夫にとっては 他人事…そう言われてもしかたがない、とは言えその男の人生はどうなるのか。

離婚した夫婦の絆がこんな形でもう一度交わるなんて。

最愛の子を取り戻した同志への祝福の思いと紙一重の報われない思い、妻の妊娠、ひとりっ子政策…

貧困、不妊、介護、養子縁組、兄と血の繋がらない幼い妹、、、

もう、お腹いっぱいなほど次から次へと どうしてこんなにも運命とは残酷なものなのかと思わされるが、とても丁寧に描けているからこそ、胸が痛い。

不妊症だと思っていた女が妊娠という結末。ところがその妊娠によってそれまで実子素同様に育ててきた子どもとの生活は二度と取り戻せないことが確定してしまうという、喜べない女の表情がもうなんとも言えなかった。

実話が元になっているとのことで、最後にそのモデルとなった人物の姿などを見てよりリアルに胸が痛くなった。むしろ、これは作品として残すべき。

俳優陣の演技、ここまでの演技を求める演出家の勝利。

私にとって忘れられない作品だ。


【レビュー②】
3日間、ふと気がつくとこの映画のことを思い返していた。
たまたま休みだったので、もう一度観た。もう一度観たかったのだ。

途中、ふとレビュー①が頭をよぎった。
何て稚拙なレビューを書いてしまったんだろうと猛省。

レビュー①を書いたときも物凄く興奮していたのだが、忘れないように急いで書きとめた。それを言い訳には出来ないが、断片的にエピソードをかいつまむような文章しか残していなかった自分を殴りたい気持ちだ。

2度目を観て、ストーリーを把握した上で観たので、作品に対してより深く入り込むことが出来た。
随所に伏線が張り巡らされていたり、象徴のような描写やカット、演出家の手腕や映画そのものを楽しむことも出来た。楽しむとは言っても、内容が内容だけに、胸は何度も張り裂けそうになったが。

そして、俳優陣の演技力。これは本当に演技なのだろうかと思うほどに同情し胸が掻きむしられる思いで幾度となく涙した。
息子が手元に戻ってきても尚苦しみの呪縛から逃れられない父母。子どもの気持ち。
息子が戻ってきてから優しくなった父の表情や、息子のためにもう一人の女の子を養女にしようと決意した瞬間 初めて手を繋いでくれた息子に喜びと感動が溢れだすのを堪える母表情、振り返りたいシーンが多すぎてこれはもう一度観てしまうだろう。

苦しくて胸が痛くて 胸にズシーンと重たい石を抱えてしまったようなそんな感覚に陥る映画が好きで、そんな作品と出会ってしまうと私自身のHPを消耗してしまうのだけれども、皮肉なことにそれは私が求めていることなのであって この胸の痛みも苦しみも自分から望んで手繰り寄せているのだから、ほんとにもうね。出会えてよかった。
あんバター

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