こうみ大夫

戦場ぬ止みのこうみ大夫のレビュー・感想・評価

戦場ぬ止み(2015年製作の映画)
3.8
『標的の村』ほどではなかったものの、相変わらず沖縄の仕方ない辛さが溢れていた。抵抗しようともどうしようもない現実、それが沖縄には蔓延している。はっきりいって主張に偏りがあるインタビューで客観性を重んじるドキュメンタリーにおいてはお世辞にも上手いとは言えない作り方だが、感動してしまう。それは今の沖縄がどこを切り取ってもその辛さが出てしまうという、現実のもたらす業なのだろう。おばあが翁長当選を聞いて喜ぶ表情、一見過激派と思われるおじさんが叫んだ後に島の武士なるものを呼び、下手くそな武術を警官隊の前で見せるあたりが特に好き。
今回は「敵との語り合い」が一つテーマになっていたと思う。海保や反対運動反対派の漁師、米軍兵など、従来敵対していた人々との交流、語り合いが多く流されていて興味深かった。沖縄がどういう結末を辿るかは分からない。しかし、このような関係性が崩れないように、そう祈りただ自然を愛することしか我々にはできないのかもしれない。個人的には、「国破れて山河あり」と言うように、国はいくら破れても良いが自然は大切にした方がいいと思う。どんなことがあろうと、自然を愛することで、保守革新といった取っ払いを超えて我々は本質的な守るべきものに辿り着けるのではないか。この記録映像はそんなことを伝えてくれていると思う。
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