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たかが世界の終わりの1000のレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
4.0
お待ちかね!みんな大好きグザヴィエ・ドラン大監督の新作、通称タカセカこと『たかが☆世界の終わり』だよ!!通称はいま考えた!
もはやFilmarksを象徴すると言っても過言じゃない人気映画監督の新作とくれば、観に行くっきゃないネ!意識高い系Filmarkserのボクは当然、公開初日初回に突撃だァ〜〜!!
さてさて、どんなオシャレボーイズ・オシャレガールズが見に来てるんだろう??? 素材感の良さ気なお洋服を着たKINFOLK系男女で溢れているに違いない!! 入り口近くの席に陣取ってLet's人間観察だァ〜〜!!
んんん〜〜〜!? おやおや……??? あまり若い人がいないぞう…? 半分以上が年配のご婦人&おじさま、しかもほとんどの人がソロ参戦……。意外にもオシャレ・カップルは少ないなァ……。これは予想外ダ……。

とにかく本編だ! キタキタ、これはさっそく『トム・アット・ザ・ファーム』のエンディングを彷彿とさせる”車移動シーン”だ!! 車で移動しているだけなのになんかオシャレ!!さすがドラン監督だぜ!
物語は余命宣告かなんかを受けた主人公が里帰りするところから始まる。「うえ〜ん、ボク死んじゃうヨーー!」って伝えたいのに、短期な兄、ヒス入ってる母、ギャルな妹、なよなよした兄嫁が勝手に盛り上がってるせいでタイミングが見つからない! 一貫して、それだけの話ですな。
うざい母親を描くことに関しては万年パルムドールのドラン節が今回も効いてます。他の登場人物も片っ端から叫ぶ叫ぶ、言葉と言葉の応酬、とにかくキレにキレる。『アウトレイジ』かて。兄に関しては他のレビュアーさんの間でもボロカスに書かれてるように、理不尽に喧嘩売りまくってはガンガン逆ギレします。

しかし、そこには当然、田舎に閉じ込められた閉塞感がえぐり出されてくる。それぞれの登場人物が置かれている状況を鑑みると、その抑圧された感情がいつ爆発してもおかしくないのがよく分かります。カメラワークを含む演出の一つ一つを通して、たった100分という時間のなかで、これだけ繊細な心情描写を成し遂げたのは評価に値する点です。
家族は本質的に分かり合えない、というのがグザヴィエ・ドラン監督のメインテーマの一つなのかもしれません。あれだけ人気を博し、一見ポップに見える前作『Mommy/マミー』も、突き詰めれば家庭内の奮闘と挫折、最終的には瓦解が描かれている。最も近いはずなのに、ある意味では最も遠い存在としての家族、その二面性をあるときは悲劇的に、あるときはアイロニカルに描くのがグザヴィエ・ドランという監督だと思います。作品の影響を作家のバックグラウンドに求めるのはあまり好きではないですが、そこには同性愛者としての監督の体験もファクターとして機能しているのかもしれない。

いずれにせよ、『Mommy/マミー』で見られたような映像的実験(スクエア型の画面など)や、『わたしはロランス』みたいなロマンス大作、あるいは『トム・アット・ザ・ファーム』のようなサスペンス要素を含むアート映画、それらを期待する鑑賞者を次々と裏切るような作品なのは間違いありません。逆に、初期の『マイ・マザー』『胸騒ぎの恋人』が好きな方はきっと気にいるはずです。ある意味では原点回帰な作品だといえるのではないでしょうか。

しかし、グザヴィエ・ドランのファンともなれば私も含め、全作品目を通してる人ばかりだと思うので、本音としてはもう一歩踏み込んだ映像が観たかったところ。『Mommy/マミー』のように、普段アート映画を観ない客層まで引き込む魅力、話題性には欠けていたように感じます。佳作ではあるけど、傑作とは言い難い点から★4.0。個人的に同監督の作品としては、どちらかというと好きな方です。

一方で、チラシもキャラクター別に五枚用意されているなど、宣伝面で相当力を入れていることがうかがえます。今回は情報解禁も速く、少なくとも一年前からファンの間では期待されてた作品なので、ちょっと期待しすぎて肩透かしを食らったのも事実。ニュートラルな目で見ればもっと楽しめたのかもしれない。
とはいえ、本当に多作な監督さんです。製作中の『The Death and Life of John F. Donovan』は初の英語作品であるほか、ナタリー・ポートマンみたいな米国の大女優をキャスティングするなど、毛色の違った作品になることが予想されます。一時は2016年公開なんて噂もありましたが、さすがに無茶でしたね(結局2018年になるのかな?)。次回も楽しみにしています。
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