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たかが世界の終わりのjoysmilesのレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
3.9
見終わった瞬間、「むぅぅ」と唸ってしまった。"家族"というものが抱える歪さを、まざまざと見せつけられた気持ちがした。

そして、しばらくエンドロールを見つめていると、ゾワゾワと凄い映画を観てしまったなぁ、という興奮というか畏怖というか奇妙な感覚がやってきた。

99分の作中、出てくるのは、ほぼ5人の登場人物のみ。でも、退屈を感じさせない。畳み掛けられる言葉たち。でも、主人公は殆ど喋らない。会話は平行線を辿り噛み合わない。でも、そのすれ違いが"家族"の形を浮き彫りにして行く。

原作が戯曲だと分かると、納得できる点もある。が、その脚本をこう言う映像で観せてくるのか…と溜息が出てしまう。

全編を通じて、役者がアップで映されるシーンが多用されている(というか、8割方以上だろうか…)。それにより、とても細かいカット割がされてて、単調な話の中にスピード感を生んでるようも思う。もちろん、独特な音楽の使い方や映像の構図・色彩美という格好の良さも、疾走感を増す装置になってる。

語り出すと止まらなくなってしまいそうなほどに、あらゆるところに様々な要素が散りばめられてる。思い返しても面白さがある映画だった。

散々講釈じみたことを書き連ねてしまったけど、一点だけ、ひと言で表せる表現がある。「かっこいい」。とにかく、悔しくなるくらい、かっこいい映画。
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