MasaichiYaguchi

沖縄 うりずんの雨のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

沖縄 うりずんの雨(2015年製作の映画)
4.0
第89回キネマ旬報ベストテン表彰式での上映で鑑賞。
この長編ドキュメンタリー映画は、戦後70年、映画製作・配給会社シグロ30周年記念作品として製作、公開されたが、1945年4月1日の米軍上陸から始まり、名護市辺野古への普天間飛行場代替施設の移設反対運動で揺れる今日までの沖縄をクローズアップしている。
本作は4部構成になっていて、〈第1部 沖縄戦〉では、12週間に及んだ戦闘で4人に1人の住人が亡くなった沖縄戦を検証し、〈第2部 占領〉では、終戦を待たずに始まっていた米軍占領政策と基地建設の真実に迫り、〈第3部 陵辱〉では、読谷村でのチビチリガマ集団自決や、米軍兵士の女性への性的暴力の実態を、そして最終章の〈第4部 明日へ〉では、米軍基地建設問題を取り上げている。
この手のドキュメンタリーではどうしても、“被害者”である沖縄の立場で語られることが多いが、本作では沖縄住民への取材だけでなく、元米兵や元日本兵へのインタビュー、更に米軍の貴重な記録映像まで交えて多角的に、未だ終わらない沖縄の戦後を見詰めていく。
タイトルの中にある「うりずん」は潤い初めを意味し、草木が芽吹く3月から沖縄が梅雨入りする5月頃を指し、丁度この頃に沖縄戦が行われていたので、当時のことを思い出して体調を崩す人々がいることを表している。
この作品を観た後では、辺野古への米軍基地建設を反対する沖縄の人々の心情が前よりも汲み取れ、映画の中で元沖縄県知事の大田昌秀さんの「沖縄は日本の捨石」という言葉が重く心に残る。