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ザ・リザード
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『ザ・リザード』に投稿された感想・評価

AM
4.0
窃盗の罪で投獄されていたレザは、導師(僧侶)に変装することで脱獄に成功した。
が国外逃亡を企てた後、国境近くの街でモスクの導師にされてしまう。
といってもただの不良なので、無知ながら一生懸命導師のフリ。なんとなーくそれっぽく色々やってみるのがお茶目で可愛い。
なんせ、導師の格好(白いターバンに黒マント)だから、「我々の村でお祈りしてください、ああ何と光栄な」と事あるごとに周囲から懇願され、「ああ、いいとも」と断れず快諾(のフリ。)
無論、イスラムの教えなどに見向きもせず悪事ばかりの彼(神なんかクソ喰らえだ。と言ってたくらい)はコーランの読み方を知らないので恐々としながら先頭で祈らされるも、コーランを読むフリしか出来ず。
出だしの「ビスミッラーヒルラハマーニル ラヒーム(慈悲深きアッラーの御名において)…」
の後の長い節々はモゴモゴで誤魔化す…無理あるくらい気合いで誤魔化す。
たまに「アッラーフアクバル(アッラーは偉大なり)」だけはっきりと唱える。もう正にMr.ビーン。
ターバン前後逆に被っちゃうし、説教壇でつまづくし、
女好き全開で周りに止められるし、壁平気でよじ登っちゃうし、喧嘩めっちゃ強いし、兎に角口が悪い。たまにポロって素顔がでちゃうのもお茶目で可愛い。
そんなこんなで幾多と迫り来る修羅場をくぐり抜けるうちに、心境にも変化が。
なんせ着させられたその「服」の代償はあまりにも大きかった。
心までも変えるように、彼は努力したんだね、物凄い葛藤があっただろうと思うが、心の向くままに行動する彼は素敵でグッと来る。
ゆくゆくの展開はサシャバロンコーエンのディクテーターを彷彿させられました。
イラン国内では上映禁止になったが公開時には大喝采を受けたコメディ映画らしいのだが、なぜこんなに面白いのに日本で出回らないのか不思議〜!なくらい面白い。
リザード(とかげ)の異名を持つ窃盗犯、レザーはムッラー(イスラム僧)の服を盗み、しれっとして刑務所を抜け出してしまう。行く先々で人々から祈りと説法を請われるが、この男、コーランもまともに暗唱できやしない。最初はしどろもどろ、ところが回数を重ねるうちにソレらしくなっていく、その過程が滑稽だ。

なにせ、本物の聖職者などではないから、列車のコンパートメントで乗り合わせた美女にはヘラヘラ。後からやってきた婆さんを見て露骨にガッカリする場面も、あまりにもニンゲンくさくて可笑しくて仕方ない。

嘘をついちゃいかんと正論をぶちかましたいところだが、ハッタリとごり押しでもって、人々の悩みを解決してやったりもする。秘密の逢瀬を楽しむ若者、ゴラマリには「人っていうのは、ついつい悪いほうへ引き寄せられちゃうものだよ」なんて、窃盗・脱獄犯のレザーが言うものだから妙に説得力があるのも可笑しい。

唐突なエンディング。あれは、どう解釈したらいいものか。「情け」ということか。残酷な終わり方ではなかった、そう思いたい。

「ザ・リザード」を初めて見たのは、7~8年くらい前だっただろうか。赤坂公民館でのイラン映画祭だったか、それとも東大・東洋文化研究所での中東映画研究会の上映会だったか。あの頃の私はイラン映画入門者で気づきもしなかったのだが、主人公を演じるパルヴィース・パラストゥーイが、私を大泣きさせるThe Willow Treeで盲人ユーセフを演じ、「イランでも、こんなエキサイティングなアクション映画を作るのか」と驚かせた「ボディガード」で漢の中の漢、ヘイダルを演じた俳優だと知ったのは、だいぶ後になってからである。

そして、もうひとつ。ひとりでも多くの方に知ってほしい登場人物がいる。レザーをムッラーと信じて、金魚の糞のように後を追い、コトあるごとに青いコームで髪をとかしていた青年。彼が誰だかすぐに気づく人は何人いるだろうか。

「テヘラン悪ガキ日記」で悪ガキを演じた少年院の男の子、ホセイン・ソレイマニーくん。実生活でも、実は少年院にいて、撮影後に監督が保釈金を納めて、彼は釈放される。その後、彼はどうなったのかな~と気になり調べたところ、なんと彼は俳優・詩人になっていた。「テヘラン悪ガキ日記」でお母さんのように慕っていたソーシャルワーカーを演じたのは、慈愛溢れる美しいファテメ・モタメド・アリアさん。ホセインは詩を書きあげたり、人生の節目でする決断がある時、ファテメさんに相談するほどの信頼関係を築いた。

饅頭みたいな顔をしたいたずらっ子が、あんなスラリとしたハンサムな青年に育って感激だよ、と気分は親戚のおばちゃん気分。