予想以上、どころかものすごく良い。アフター・アウシュビッツの話だがゴリ押しのメッセージ映画ではない。血の流れないノワール。全てのセンスがいい。素晴らしい。
あるシーンは「死刑台のエレベーター」のあるシーンを彷彿とさせ、どうしようもない気持ちに襲われた。
ある程度映画を見慣れている人間には「その瞬間が」訪れる時は予想はしているだろうが、それでもこんな形で映し出すのかという、もう鳥肌というか、化学変化を起こしていくような瞬間だった。すばらしい。こんな瞬間を見たくて映画を見続けているのかもしれない。
夫にとってネリー(妻)を規定させているものとは。アウシュビッツで顔とまともな歩行を、人生を奪われたネリー本人にとって自分を規定させるものとは何なのか。
暗闇に自らの顔が隠れているシーンは多くの人々が言及するようにヒッチコックの「めまい」からの引用だろう。顔が見えなくとも我々はネリーと規定する瞬間。
失われたアイデンティティ、男側からの妻を規定させていたものが交錯した瞬間、その時に湧き上がった感情を表す言葉が浮かばない。
音楽はもちろん最高だが女性たちの洋服がとても素敵。おすすめ。