MasaichiYaguchi

無頼漢 渇いた罪のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

無頼漢 渇いた罪(2015年製作の映画)
4.0
「腐りかけが旨い」という賞味期限も消費期限も無視して、腹痛や食中りを覚悟の上で食べる人がいる。
また「火中の栗を拾う」、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」のように敢えて危険を冒そうとする人もいる。
人はやらない方が良い、手を出さない方が良いと分かっていながらも、それに挑むことに快感を見出してしまう。
本作のヒロインのように多額の借金を抱え、乱暴でロクでもない、殺人事件の容疑者でもあるヒモのような男に惚れて執着する女がいる。
そしてこの犯罪者の女で、捜査対象者であることを分かっていながらも強く惹かれてしまう刑事がいる。
理屈では疫病神のような存在だと分かっていても惹かれてしまう人間の不可解さ厄介さ。
本作では道ならぬ恋に嵌った犯罪者の女と刑事とのスリリングで熱い愛が官能的に描かれていく。
ヒロイン・キム・ヘギョン役のチョン・ドヨン、チョン・ジェゴン役のキム・ナムギル、パク・ジェンギル役のパク・ソンウンが、夫々の持ち味を発揮していて魅力的で、作品の持つノワールの世界に引き込まれる。
良い結果を生むとは思えない三者の交わりが、衝撃的な結末に向かってドラマチックに展開していく。
身を滅ぼすかもしれない危険なものに惹かれ、それに手を出さずにいられないからこそ人間は面白いし、だから文学や音楽、そしてテレビドラマや映画が生まれるのかもしれない。