【第68回カンヌ映画祭 パルムドール】
『預言者』『ゴールデン・リバー』などのフランスの名匠ジャック・オーディアール監督作品。
ジャック・オーディアールにしては平凡な作品で、パルムドールを予想していた人はほとんどいなかったという。(『サウルの息子』『キャロル』などが有力視されていた。)
スリランカからフランスへ渡った疑似家族の物語で、終盤までは静かにフランスに溶け込もうとする様子が淡々と描かれる。しかし終盤はオーディアールらしいバイオレントな描写が連続、ラストはまあ収まるべきところに収まったという感じ。
象のカットが挟み込まれたりと移民の故郷への想いが言葉でなく示されるあたりは非常によかった。疑似家族として絶妙な距離感を最後まで保つ演出力も素晴らしい。
ただやはりラストは釈然としない。というか終盤の戦いぶりはいいんだけど、その動機が弱く唐突にみえる。シナリオに問題ないかなぁこれ。
まあ良作ではあるし、移民問題と疑似家族というカンヌらしいテーマをいやらしくなく自然に描けてはいる。
ただオーディアール作品で唯一みている『ゴールデン・リバー』と比べても特別優れた作品とは言えないような気がする。