フクイヒロシ

ディーパンの闘いのフクイヒロシのレビュー・感想・評価

ディーパンの闘い(2015年製作の映画)
5.0
物理的には密室じゃないけど、「内戦」や「難民」「貧困」「暴力」という自らの力では逃れられない状況に閉じ込められた人たちの話。

登場人物とカメラとの近さが『サウルの息子』と同様の恐怖を煽る。


疑似家族のほのぼのした時間とヒリヒリとヤバイ外界の緊張と緩和が繰り返し描かれて、上映時間たっぷり使って「もう勘弁してくれ」というほどに緊張感が高まる。

並みのホラー映画なんか比じゃないくらい怖い。


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主役ディーパンを演じたアントニーターサン・ジェスターサンは元少年兵とのこと。
演技力を超えたリアルさはこの経歴から来たものでしょう。
しかし、彼自身が持っている温かさやユーモアと知的さがキャラクターに奥行きを与えていた。かっこいいし可愛いし、感情移入でたし希望を託せた。


妻役の女優さんも良かった。
映画的な行動範囲を越える彼女に驚かされるけど、この状況の人間ならきっとこうするんだろうという説得力があった。
「ホットカーペットで毛布にくるまって画面見てるだけだろ。難民の気持ちわかった気になってんじゃねえよ」と言われた気分。。


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好きで内戦のある土地に生まれたわけじゃない。
誰も難民になりたいわけじゃない。
言葉の不自由な国でやっと見つけた仕事場が銃声鳴り響く貧困街だったとしても他の仕事なんて選べない。


自分だけ幸せならいいというのはどれほどの悪なんだろうか。。
問題提起が重い。。




※ラストについてはコメント蘭に。