まぬ子

神のゆらぎのまぬ子のレビュー・感想・評価

神のゆらぎ(2014年製作の映画)
3.0
奇跡が起きない限り、神の存在は感じられない。

飛行機墜落事故の前後、それぞれの奇跡を願う四組のワケありな男女。終わりに向けて時系列が整ってくるのは思いがけない構成だった。
登場人物たちは、アルコールやギャンブルに依存したり、過去の罪や不倫から抜け出せなかったりと誰もが弱さを持っている。信仰もまた然りで、根本の弱さは同じだと思うな。信仰も一種の依存。

何かに依存しても、人間の心から弱さはなくならない。
弱いから人は信仰に縋ってるはずなのに、信仰が人を弱くしてるよう。罰するのが神だとしても、人の罪を赦せるのは自分や生身の人間しかいないのにね。

ストーリーの中心となるのが、宗教戒律として輸血を禁じるエホバの証人のカップル。白血病患者として死へ近づいてく男、看護師として選択を迫られる女、それぞれがその戒律と向き合わなければならない。
敬虔な信者たちの直向きに奇跡を祈る姿や、厚い信仰心はとても純粋な魂に感じられる。
けど、私には戒律は幻想でしかないように映るなぁ。見えない死後の魂の行き場や血の汚れよりも、オイ現実みろよと。
「飛行機が落ちるのは、全能の神が存在しないからだ」というセリフは辛辣だった。

どうにもならない事はただ祈るしかできない。けど、神の介在なくして、自分の意思や選択で変えられる現実を「奇跡」とは捉えられないのか。

もし我が家がエホバを信仰してたら、全身輸血した私は今ここにいないはず。
輸血を罪深く汚らわしい行為と言われるのは、生きてきた時間すら全否定されるようですごく複雑な気分だな…

# 121/2018
まぬ子

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