河原和音さん原作、アルコさん作画の別冊マーガレット連載中の少女漫画を映画化した本作は、この手のラブコメディでは異例の強面で屈強な肉体を持つ男、剛田猛男が主人公。
この一見ゴリラのような主人公とキュートなヒロイン・大和凛子とのもどかしい恋が、猛男の隣家に住む幼馴染で親友の砂川誠を交えて描かれていく。
「弱きを助け強きをくじく」の言葉ではないが、困っている人を見ると放っておけない男気溢れる猛男は男子から慕われる存在だが、おじさんみたいな顔と厳つい体躯から女子からは敬遠されてしまう。
そんなある日、街中を砂川誠と一緒にいた時に、危機に陥っていた女子高生の大和凛子を助ける。
この出会いから二人のピュアで不器用な恋が始まる。
猛男は見た目とは裏腹に純情で優しい心を持つ男。
そしてスイーツ作りが得意で可愛い大和も、猛男同様初心で人を思い遣る女の子。
このカップルの見た目はギャップがあるが、心根において似た者同士だと思う。
自分より他人を優先してしまう、純粋で優しい二人の焦れったい恋に巻き込まれながらも、そっと彼らを見守る砂川が良い。
ハンサムでクレバー、女性にモテモテだけど、猛男のことを大切に思っている彼が終盤で二人の為に“グッジョブ”をする。
冒頭の強烈な「壁ドン」、中盤の已むに已まれない「お姫様抱っこ」はあるものの、この手の映画では定番の「顎クイ」や「頭なで」等の甘い胸キュンも無い硬派な本作だが、これ程笑えて、これ程切なさ溢れるラブコメディは珍しいと思う。
体重を３０キロ増量して猛男に成り切った鈴木亮平さんの熱演、見ているこちらも蕩けてしまいそうな笑顔をする大和凛子役の永野芽郁さん、このところイイ奴役が続く砂川誠を演じた坂口健太郎さん、この３人の主要キャストが生み出す作品世界が、最後まで笑いと温もりを我々に届けてくれる。
