Masato

サウルの息子のMasatoのレビュー・感想・評価

サウルの息子(2015年製作の映画)
4.8
今年入って最初の衝撃作。

アスペクト比が4:3で、主人公にしかほとんどピントが合わない。
BGMはほとんどなく、主人公の"目"に映るものしかシーンでは流れない。

用語
・ゾンダーコマンド…収容者で編成された部隊。主に死体処理を行う。
・ラビ…ユダヤ教に於いての宗教的指導者

実際にアウシュビッツ収容所にいたゾンダーコマンド達が地中に埋めた手記を基に、収容所はどのようなものだったのかをサウルを通して描かれる。

終始明るい話などない。収容所という地獄のなかで、男は人間であり続けるために、生きる希望を探す。
息子を弔いたい。
父親としてのあるべき姿。
そして、この映画をハンガリーが作ったことに意義がある。
ハンガリーはドイツに協力し、自国にいるユダヤ人を次々と送っていた。
ハンガリー人の監督は自国の過ちを正当化することなく、映画にして伝えているということ。そこが素晴らしいと思いました。

ピントが合わないのは、彼の目はこの世界を遮っているから。当然、人の死体、ましてや同族の死体など見たくない。
サウルはその光景を見てないから、カメラもぼかして視野の中に入ってないように工夫されている。
そして、見る人に想像させる。
ガス室からの断末魔、重く響く銃声、山積みになる死体。

こんなことが当時行われていたとなると、本当に目を塞ぎたくなる。もしあのような現場にいたら、自分は発狂しているだろう。
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