千年女優

サウルの息子の千年女優のレビュー・感想・評価

サウルの息子(2015年製作の映画)
4.0
第二次世界大戦下のドイツ占領地ポーランド。アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所に連れられたユダヤ人男性で、労務部隊ゾルダーコマンドに任命されて同胞の死体処理を強制されるサウル。ガス室で処置執行されて微かに息を残す少年にかつて別れた女性との間に生まれた息子の面影を見た彼が駆け回る一日半を描いたドラマ映画です。

ユダヤ人の母親とハンガリー人で映画監督の父親の間に生まれて自身もニューヨーク大学で映画を学んだネメシュ・ラースローが実際のゾルダーコマンド退院の証言集に触発されて製作した彼の長編映画監督デビュー作で、資金集めに難航するも公開されると多方面から絶賛を集めてアカデミー賞外国語映画賞始め多くの映画賞を獲得しました。

長回しを用してシーン切替も極力シームレスに編集することで臨場感を演出していて、それが主人公の置かれたのっぴきならない異常な事態を直感的に伝えています。説明なくことが進む様はまさに当時の収容所におけるユダヤの人々の状況であったのだと想像させるもので、脚本とスタイルがかみ合って本作故のテーマを伝えている一作です。
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