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サウルの息子のHOのレビュー・感想・評価

サウルの息子(2015年製作の映画)
3.7
ゾンダーコマンド を知っていますか?



ゾンダーコマンドとは、ナチス収容所に捕らえられたユダヤ人でありながら、同胞ユダヤ人の処理をする労務部隊。

消毒をするという名目で脱衣した人々は送られた先の部屋から戻ってくることはない。次から次へと一方通行で送られてくる人々の衣類を処分し、時には貴金属をくすねてナチス将校に渡したり賄賂に使う。"部品"と呼ばれるガス室後の山のようになったユダヤ人達の死体は燃やされ埋められる。
ゾンダーコマンド達も数ヶ月で使い回され、いずれは"部品"となる運命だ。


終始サウルの背中越しにミディアムクロースアップの手持ちカメラで撮影され、被写体深度が浅く背景がピンボケのような手法だ。画面はスタンダードサイズ。
初めの長回しは静けさの中に緊張感が走る。
そしてサウルの暗色のジャケットの背中には大きく書かれた赤色の❌印が印象的だ。


毎日送られてくる大量の"部品"の中から息子を見つけたサウルはユダヤ式の埋葬をしてやりたいと願い、あの手この手でラビ(ユダヤ教聖職者)を探す。
仲間には「お前に息子はいない。」と言われるのだが、サウルは必死に探し続ける。

遺体は本当にサウルの息子なのか。そもそもサウルに息子がいるのか。仲間達の言い分が正しいのか。
そんなことはどちらでもよくて、確かなのは何が正解か分からなくなるほど精神に異常をきたす過酷な状況だったということ。
全てを奪われたサウルが唯一期待を持てるのが息子の埋葬だったということ。


そして遂にゾンダーコマンド達の反乱の日。
何とか収容所を逃げ出すことに成功し、最後にサウルが見せる笑顔にすら救いはない。
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