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ロブスターのひのネタバレレビュー・内容・結末

ロブスター(2015年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

設定が秀逸だった。とても好み。ランティモス氏の映画3個ほど見たけど、彼は簡単には安息を与えてくれないし、そればかりか常に緊張と心地悪い違和感を残してくる。でもそれが美しい描写、表現と伴うから面白い。生ぬるくてどよんとした風が吹く綺麗な世界クセになる。



お互いに横に座ってキスをする時、どっちかは右を向いて、片方は左を向く。彼らは周りの人にお互いが愛し合っているとバレないように、秘密のコードを持っていて、右を向けば、”私たちは危機に瀕している”、左を向けば、”あなたを誰よりも何よりも愛している”。このコードと隣に座った時のキスがなんだか繋がっているように思えた。誰かを愛することは危険な状態に身を置くことでもあるってことかな。自分たちの安全や快適さを犠牲にして、彼らは愛を選ぶのか。後半の森パートはそのメッセージがより色濃く描かれていたと思う。愛は何かを犠牲にして得る対価であるという示唆がこの映画にはある。


だけど、一方で、ラストシーン、彼女は視界を失ってもなお”1人”で座って待っている。なにかを犠牲にしても本当に求めていた愛はそこにはないかもしれないというドライなエンディングも好み。

名著を読んだり、名映画を楽しんだり、自分の踊りたいようにダンスしたり、そういうホテルオーナーが言うところの”人間にしかできないこと”は基本1人でするもの(完結できるもの)というのが、皮肉だと思った。2人でしかできないことは動物にもできること。
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