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グレン・ミラー物語のrenrenのネタバレレビュー・内容・結末

グレン・ミラー物語(1954年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

小学生の頃、母に連れられて初めて映画館で観た洋画がこの映画。当時吹奏楽部に入っていたので、昔の映画を映画館で再上映しているのを見つけてくれたのだと思う。
最初はなんでわざわざ…と子供心に思ったが、上映が終わった時には嗚咽が止まらず、すっかりグレン・ミラーに恋する少女となり、初めて親にねだって買って貰ったカセットは流行りのアイドルではなくグレン・ミラーのベストになったという思い出の映画だ。

そんな感傷に浸りながら久々に見返すと、主演のジェームス・スチュアートの甘いマスクに騙されてしまうが、若きミラーは結構酷い。質屋に自分のトロンボーンを入れなければいけない程の売れないミュージシャンで、後に妻になるヘレンには何年も音沙汰なしなのに強引に口説き落とす。婚約者がいると言っているのに聞かないし、また平気で音信不通になる。次に呼び寄せられたと思ったらいきなりのプロポーズ。
結婚後も現在知られるグレン・ミラーのスタイルを確立するまで苦労の連続だ。コミカルに描写されてもいるし、映画用に脚色された部分も多いとは思うが、実際のグレン・ミラーも気難しく偏屈だったりしたのだろうか、奥さんのヘレンは大変だったんだろうなと今は思い巡らせてしまう。
古いけれども彼を誰よりも忍耐強く明るく支え続けたヘレンの内助の功がなければミラーの成功は無かったのだろうと思う。

そんなミラーとヘレンの夫婦の愛情を中心としてグレン・ミラーの音楽が誕生していく様はとても心地が良い。第二次世界大戦で入隊し軍の規律に反し、単調なマーチの楽団から慰問楽団を結成して飛び回る様子までも痛快だ。それなのに彼の人生の幕引きはあまりにも唐突であっけない。誰も彼の最期を知らないし映画でも描かれない。
だからこそ余計に悲しく苦しい。
ラストに流れる茶色の小瓶の曲の中、彼を想うヘレンの表情だけで映画は幕を閉じる。

今見返してもこれが70年以上も前に制作された映画だという事に驚く。
自分の中で恐らくこれからも変わる事のない不動の名作だ。
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