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アクアマンのmのレビュー・感想・評価

アクアマン(2018年製作の映画)
4.9
ジェームズ・ワン監督の才気大爆発!超濃厚全方位マシマシ二郎系冒険大活劇、これはヤバい、ヤバ過ぎる。

怒涛の擬似長回しアクション、新感覚水中チャンバラ、ビジュアルセンス大炸裂の海底大戦争等々等々、場所を次々と移動しながら(海だけでなく砂漠やイタリアにも移動して視覚的に単調にしなかったのは大正解)とにかく全編見せ場の連打なのにパッチワーク感やダイジェスト感は一切無く、スムーズに物語は流れてひたすら全編興奮が持続する。
カメラワークも構図も色彩設計も見易く観客に全く混乱を生じさせないのがまた凄い。とにかくアクション・シーンのやたら動きまくるカメラワークが異常。スピルバーグが「タンタンの冒険」でやっていた事や「キングスマン」の教会擬似長回しが最高の形で発展した感覚で、活劇映画はかくあるべしというワン監督の気概を感じる。

あまりにスムーズかつ特殊過ぎてイカれてる場面転換の数々、少しダレそうになると背後で何かしらが爆発して会話を強引に途切れさせる噂通りの謎ルール、「太平洋のどこか」等基本「○○のどっか」的な適当場所テロップ、と緻密さと豪胆さが同居した作劇を驚嘆しつつ愉しんだ。

ヒーロー映画のビギンズものにありがちな修行や成長過程は合間合間に短い回想で描くという超的確な判断のお陰で、映画は更にスムーズにスピーディに突き進む。


アクションだけでなくドラマもロマンスも万全。冒頭10分程で描かれる主人公の両親のロマンスも、短い場面で2人のチャーミングさと愛を的確に愛らしく描写する(とか思っていたら突然ニコール・キッドマンの壮絶擬似長回しアクションが始まって度肝ぬかれる)。
主人公とヒロインのロマンスの描き方も短い中でとてもチャーミングに印象的で、そうしたドラマ描写にも抜かりがない事がこの映画の基盤を支えている。あの女性が能動的なキス(背景の演出がヤバい)も素晴らしい!


役者のキャスティングがまた良くて、ニコール・キッドマンにウィレム・デフォーとやたら良い役者が揃っている上に彼女達がジャンル映画らしからぬ良い芝居をさり気なくしているので映画に厚みが出ている。ワン組お馴染みのパトリック・ウィルソンも今回も良い。それとドルフ・ラングレンがアクション無しで渋くて良い存在感を放っていて、「クリード 炎の宿敵」に続いて嬉しいサプライズ。

「ジャスティス・リーグ」では活かされなかったジェイソン・モモアの素の可愛らしさが今回遂に発揮されていて、豪胆且つチャーミングなアクアマン像がこの映画で完成された。豪胆さだけでなく、他人に対して敬意と優しさがある人物として描かれているのが素敵だった。

アンバー・ハードは(語弊があるかもしれないが、肯定的な意味として)とにかくマブい!彼女が演じるメラが精神的にも物理的にも強くて、冒険の主導権を握って主人公を引っ張っていくのも現代的で良い。正直たまに演技が微妙な所があった気がするが、モモアさんやニコール・キッドマンらと並び立っても特に動じず負けない人間としての存在の強度みたいなものがあってそこが流石アンバー・ハード。


パトリック・ウィルソンのたくらみや言動が『アメリカ政府』的だったり、自然界を怒らせる行為として捕鯨がガッツリ映されている所も今の正義をちゃんと見据えていて良い。


ブラック・マンタとその父親らサブの悪役や一瞬出てきてトイレの水飲む悪役等脇の脇まで敬意や可愛らしさを与える事や、パトリック・ウィルソンの結末とその時の主人公の台詞に、どんな登場人物でも『人間』として扱うワン監督の、この映画の優しさが現れている。
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