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エベレスト3Dのkitoのレビュー・感想・評価

エベレスト3D(2015年製作の映画)
3.7
痛々しい実話なのでまあまあ滅入る内容。今日のような荒天の寒々しい日に観ると、恐ろしさが増し増しに感じられた。

前日に観た「神々の山嶺」にも遭難シーンはあったし、山岳ものでは避けて通れない事なのだけど、「神々」では遭難はメインテーマではなかったと思う。

一方、本作は1996年に実際に起こった大量遭難事故を描いている。これは2014年、2015年の雪崩による遭難事故を除けばエベレストで最も多い死亡者が出た遭難事故とされている。

観終わってから例によってWikipediaの「1996年のエベレスト大量遭難」を読むと、まるで映画をテキストに落とし込んだかのような記述になっている。

日本人女性で2人目のエベレスト登頂者及び七大陸最高峰の登頂者となった難波康子が出てくる。そういえば、一時期、NHKで良く観た日本人女性登山家の第一人者、田部井淳子を思い出した。

登場人物が多く相関関係は把握しづらいけれど、事故の経緯やそこに至るまでの背景は分かりやすく描かれており、素人目にも原因は察せられる。

富裕層向けの商業登山が登場し、世界中のアマチュア登山家がエヴェレストに押し寄せ、登山コースで渋滞が起こるという話はニュースで観たことがある。日本においても近年の登山ブームやインバウンドの増加により、富士山に蟻と見紛う登山者の長蛇の列が出来ている様子が流れている。

死と隣り合わせな登山では、個々のエゴや山への執着がゴチャゴチャに混じり合い、非常事態が発生すると結局は不幸な結末を迎えるんだなぁ。本作ではその様子が上手く描かれていて良質なパニック映画のように感じた。

まあ、インドア派としてはエヴェレストに登ろうなんて決して思わないけれど、気軽なハイキング程度でも山登りに危険は付きものだと肝に銘じた。
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