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この世界の片隅にのDのネタバレレビュー・内容・結末

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

起こらなければいいなと思うことばかり起こる異常な日常。右手を失った程度では誰も驚かず、みな口を揃えて良かったと言う。絵を描けないなどと嘆くことはできない。いつまでも悲しみに甘えて心を閉ざし続けることはできない。この場所で生きるのなら。人が死ぬことでさえもさっぱりと受け入れるほかない。一体全体、何のために、大切な人を失わなければならなかったのだろう?共に耐え忍ぶ人々が各々を少しずつ犠牲にしながら生活を繋いでいく。右手のない生活は明日も明後日も10年後も死ぬまで続く。耐えて受け入れなければならない厳しさと、エンドロールで子供に託された希望。そして高度経済成長へ。
この世界は救いようがないけれど、一度どん底に落ちた人間の希望とエネルギーはこれほどまでに輝かしい。そして、世界の片隅で、物理的に限られた繋がりというのはやはり強固なものになる。どれも現代に生きる私にはないものだった。羨ましいと言うのは失礼だけど、美しかった。
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