たった70年前、かくも不条理な世の中で懸命に生きた主人公。
いや、当時の広島、そして呉の市井の人々は、この不条理な中で泣き笑い、そして悩み…。
今の人たちと同じように、懸命に生きていったのだと思った。
何気ない日常、失われた街の輪郭、娯楽や風俗などの文化の細部に至るまで、これでもかと丁寧に描ききってくれている。
あの一瞬が奪った世界を、この映画は見事に蘇みがえらせた。
豊かな想像力と希望あふれる笑顔で過ごしているすずの姿、そこに祖母の若かりし頃が重なって見えた。
できれば祖母と見に行きたかった作品。