きえ

湯を沸かすほどの熱い愛のきえのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
4.7
とにかく泣いた。
でも湿っぽい涙ではなくあったかい涙なのだ。こんなに泣いた映画は久しぶりだと思う。『お母ちゃん』って呼び方の何とあったかい事か…。

実は小さい頃私も『お母ちゃん』と呼んでた。『お母さん』と上手く言えなくてそのまま。でも小学校に入ると友達に聞かれるのが恥ずかしく『お母さん』と呼ぶようになって”しまった”。心の中ではずっと『お母ちゃん』だったにも関わらず。

久しぶりに聞いた懐かしい響きだけで涙が溢れそうになった。何故なら母はもうこの世にいないから…

死は決して避けられない。でもこの作品を観ながら理想的な死とは何かを考えた。そして私なりの答えが出た。それは『安心して死ねる事』。自分がいなくなっても残された人々がちゃんと生きて行けると思えた時に、少なくとも私は”安心して死ねる”と思う。

親が子供にすべき事とは、自分の足でしっかり立ちしっかり歩いて行く力を与える事だと思う。親が子に遺すべき物とは、お金でも物でもなく、時には突き放せる強さを持った愛だと思う。

宮沢りえ演じる”お母ちゃん”の中に、本来の親の姿と、子を持って初めて強くなる母親の偉大さを見た。りえさんの醸し出す包容力は演技を超えたものだと思ったし、死にゆく姿は神々しい演技だった。

そんな母に応える娘役の杉咲花ちゃんの演技がこれまた素晴らしかった。彼女は間違いなく日本を代表する女優さんになると思う。

原作の映画化が多い邦画の中にあってオリジナル脚本は久しい。ストーリーが幾層にも重なり合いながら一貫しているのは”愛”。親だからとかではなく、人として人を愛する事がどう言う事なのか…そんなエッセンスが詰まった熱くて深い映画。

ラストが秀逸!

あったかい湯船に浸かって『ふぅーっ』と息を吐く時に感じる開放感と幸福感を是非みんなに味わって貰いたい。

今年は優れた邦画が多く洋画が霞んでしまうほどだけど、そんな邦画もグロい作品や重い作品が多かった中、この作品はとても幸せであったかい気持ちになれる。やっぱり私は気持ちがハッピーになる映画が好き! 全てにおいて素晴らしかった!
きえ

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