都部

残穢 住んではいけない部屋の都部のレビュー・感想・評価

2.9
物見遊山気分でだらだらだらだらと長話をしやがってよ……と恐怖体験を題材とした映像作品にあるまじき緊張感に欠ける構成には苦言を呈さずにはいられませんが、地に足の着いた生活音に混じる異音や空間が作り出す恐怖で作品を彩ることにはかろうじて成功しており、時代の移り変わりによる民草の居住の流動が生む情報の錯綜を推理劇的な語り口で纏め上げている。

緊張感の欠如の要因としてあるのは語り部の問題に対する当事者性の喪失にあり、物語の推進を伝聞に大きく委ねる構成は小説としては適切でも映像作品としての不適正を顕しているからだ。

段階的な真相の開示はあくまで淡々と語られ、次々と明るみになる奇談が齎す恐怖は前述した作品特有の独自的な恐怖を活かしたものの対極に位置する演出の数々が基調となり、瞬間の恐怖を演出するも構成全体の完成度には帰依していないというのが見るからに分かる。

並み居る奇談関係者達の伝聞で進行する前半は百歩譲ってそれで良いとしても、実在するホラー作家 平山夢明氏がモデルの平岡芳明の登場から雰囲気の一変を迎えたようで、受動的な語り部の姿勢はそのままに事件の真髄へと深く深く潜り込んでいく展開には味がない。
最終盤に物語の真相を握る場へと辿り着いた主人公達が、懐中電灯片手に揃って侵入する姿はその不文律な温度差を鑑みるに滑稽である。
本作が原作のようにモキュメンタリー的な側面を持っているならばともかく、劇場化により登場人物の名前や設定の変更が成されたことで実在性は既に失われているのだから。

また本作は原作と細部が異なる点が見受けられる。顕著なのがその結末で、より大衆層に向けた作品として分かりやすい恐怖とオチを物語の完結の為に用意しているのだが、立て続けに見せる感じは普通に陳腐であるし芸がない。尾を引く後味という点では作品の筋書き頼りで、映像化の妙を活かしている場面/そうでない場面がスッパリと分かれているため賛否両論になって然るべき作品だろう。
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