kohei

ハッピーアワーのkoheiのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
5.0
2021.1.2 再鑑賞

こんなに後味の悪い映画だったけなぁと驚いている。前に観たすごくいい記憶だけを頭の中に残してたんだなと。

正直言って、初めてみたときほどの豊かな感情を抱けなかったような気がする。それはただ単に2回目の鑑賞だからなのか、(この2年間で得た)すでに知っているものが映っていたからなのか。

冒頭に繰り広げられるちょっと胡散臭いワークショップというものは、この映画にとって、彼女たちの人生にとってどう機能しているものなのか、そのあたりがすごく気になる2回目だった(それというのも、1回目に観たときよりそのシークエンスが退屈に感じられたからだ)。人間のこころが暴かれるのはいつも対話している場面であり、身体の連なりは単なるまやかしのつながり。そういった後半に向けてのフリのようにも見える構成だけど、いやしかし純もあかりも感想を述べる際に「幸せな時間だった」と口にしていたではないか。普段の生活では味わえない感情を得られたと。そこに対話以上の何かが存在するとは思えないけれど、少なくとも内容のない会話や愛のないセックスよりはマシなのだろうと思わせられた。

ハッピーアワーのラストがこんなにPASSIONと類似してたっけと驚いたり。もうどうにも元に戻らない崩壊を経験しないと、人間は永久の関係を構築できないのか。それならばずいぶんと先行きが危ういなと、ちょっと人生が不安になるのだった…。

***


自分が観てきた映画史上いちばん“深い”作品だと思う。深いというか底知れないと言うべきか

でもね、深い映画に出会う時に思う「深い(実際には深そうな)映画だからまた何年後かに見たいな(もうちょっと大人になればわかるのかな)」っていういつもの感じとは少し違うくて、もう今の時点で分かりみがすごいのだ。めっちゃわかるのだけど、めっちゃわからないんだ。それこそこの映画のテーマみたいなことだ。

分かっている、繋がってると思いきや実は繋がっていないということが明らかになる。そしてそのことによって、急に足元がグラつきだす。

何度も何度も、正中線と言う名の「心」が対面する瞬間がある。それでも、その心を繋ぎとめておく能力は私たち人間には備わっていないから、いとも簡単に関係は浮遊する。心は彷徨いだす。

長い長いトンネルのような映画。あの夫婦や友情のように、一回壊れた先に本当の「本当」があるかもしれないなんて、そんな簡単なことは言えない。

これが自分なのか、と衝撃を受けた。
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