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パッセンジャーのJAmmyWAngのレビュー・感想・評価

パッセンジャー(2016年製作の映画)
3.5
このシチュエーションにおける孤独というものは、つまりはバークリー的な「存在する事は知覚される事である」という経験論的観念論に即した「実在の危機」に他ならないのだなあと思わせられます。

人物も事物も、観客に認識される「スクリーン上の世界」において、そして物語内の人物に認識される「各々の意志と表象としての世界」において、双方のレベルで「我思われる、故に我あり」方式によりその実在を獲得していく認識の構図があって、空間的にも時間的にもそこに実在への希望を見出していくワケです。

ただしこうした実在性は「他者」という存在を得て初めて成立するワケですけど、「他者」の暖かい気持ち良さだけでなく、おぞましい気持ち悪さをも描いている事から考えれば、これはマイルドに漂白された『エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』だという趣もあると感じました。

この宇宙船には様々な人種のパッセンジャーが乗船しているワケですが、船内のインテリアに《幸せ遠征》という新しい日本語を発見しまして、その遠征はあらゆる遠征の中でも最も幸せな遠征なのだろうなと確信させる強引な言語的パワーが溢れていて、僕は大変喜ばしい事だなあと思いました。
邦題はもう『パッセンジャー ~幸せ遠征~』でいいんじゃないか。
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