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パッセンジャーのmのネタバレレビュー・内容・結末

パッセンジャー(2016年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

数年前にこの脚本がブラックリスト入りしたという記事を雑誌で読んだ時に、「孤独に耐えかねた男が女を冷凍睡眠から故意に起こす」というプロットがガッツリ書いてあって、随分攻めた話だなと記憶に残っていた。
「宇宙版『タイタニック』」というこの映画の宣伝文句を読んで「本当にあれの映画化なら、この宣伝文句と真逆の映画なんだけど大丈夫かな・・」と思ったがやっぱり大丈夫ではなかった。宣伝に偽りあり、思いっきりあれの映画化でした。


SFとしてのディテールの細かさと、孤独に蝕まれていくクリス・プラットの心情とを丹念に積み重ねていく序盤は素晴らしい。
孤独に疲れて絶望し、眠るジェニファー・ローレンスを見つけて希望を見出し、理性で抑えようとしながらも孤独からジェニファーを起こしたいという衝動にどうしようもなく駆られていく感情の複雑さをクリスが見事な表情芝居で演じている。この辺りの監督の演出もとても良い。
女性から見るとたまったものではない酷い話だが、クリスが主人公を演じる事でギリギリ観ていられるラインを保っている(のか?)。

クリスとジェニファーとの甘ったるいロマンスは何故彼女が起きたかを知っている観客としては嫌悪し苛立つしかないが、中盤で真実をジェニファーが知ってからはとても面白い。全身で男を拒絶する女。嫌悪と怒りを露わにするジェニファー・ローレンスは面目躍如で素晴らしい。

このまま最後までどうしようもない男と怒れる女のぐちゃぐちゃな関係性の話として、SFの衣を借りた「フレンチアルプスで起きたこと」のような複雑な北欧映画のように進んでいけばこの映画にも成功の道はあったかもしれないが(それこそ「THE END OF EVANGELION」のエンディングみたいになってくれると良かった)、残念ながらこの映画は短略的にハリウッド式ハッピーエンドへと舵を切る。複雑な道を歩む事ができた監督と役者陣だっただけに、残念だった。
ジェニファー・ローレンスのパワフルな生命力に反して、この映画の終盤は結局女性を都合のいい存在として扱ってしまっている。

音楽と撮影は素晴らしい。
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