はるな

COP CAR コップ・カーのはるなのネタバレレビュー・内容・結末

COP CAR コップ・カー(2015年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ジョン・ワッツ監督『コップ・カー』は『グーニーズ』や『フェリスはある朝突然に』『スタンド・バイ・ミー』等の一連の名作ジュブナイルものの系譜を受け継いだ隠れた名作です。ジュブナイルもの、特にその中でもホラー要素を取り入れたような作品の肝は「成長というものが不可避的に内包している残酷さ、時間と成長の不可逆性」です。これらの作品の主人公は子どもであり、子どもの領域にいる人物たちです。彼らは劇中に起こるある事件や出来事を通してそれまでの人生で経験したことの無い恐い大人の世界を垣間見てしまうのです。彼らはその世界から逃れようと必死に戦い、その中で人間として一歩成長する(=大人になる)のです。しかし、過ぎた時間が戻らないのと同じく一度成長してしまえば二度とその前の状態に戻ることは出来ないのです。
ジョン・ワッツ作品には一貫して"恐い大人の世界"を体現するヴィランが登場します。スパイダーマンシリーズ『ホームカミング』『ファー・フロム・ホーム』ではマイケル・キートンのヴァルチャーとジェイク・ギレンホールのミステリオ、本作『コップ・カー』ではケヴィン・ベーコン演じる悪徳保安官です。彼らは皆、子どもを脅かす存在として登場し主人公は力を合わせ彼らに抗います。子ども側は子どもならではの常識外れなアイデアや奇抜な作戦など、大人が予想もして無かったようなひらめきで一矢報います。ジョン・ワッツが描き出すものは大人から子どもへの一方的な因縁ではありません。大人たちは大人たちで、子どもの無邪気さや無垢さに触れたことで思いもよらぬ痛手を食らい、計画が破綻し破滅していくのです。大人と子ども、二つの相反する世界の鬩ぎ合いこそ成長であり、それは我々の日常にも潜む最も恐ろしいドラマなのです。
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