都部

ヴィジットの都部のレビュー・感想・評価

ヴィジット(2015年製作の映画)
4.1
最新作の『OLD』が中指を立てざるを得ない出来だったので戦々恐々でしたが、本作は非常に好みかつ面白い作品でしたね。

疎遠がちな祖父母夫妻の元へと帰省する兄弟達は、母と祖父母の和解を題材にドキュメンタリー映画を撮ろうと画策する──という筋書きから本作には一定のメタ構造が張られることを想像するのは容易なのですが、このメタを扱っての作品のテンションの操作が非常に巧み。

たとえば 今にも何かが起きそうな不穏な雰囲気が漂う画面になったかと思えば『撮影の為に姉がそれっぽいシーンを撮ってました』などの緊張からの緩和を上手く織り込んだ梯子外しの笑いが挿入され、かと思えば姉弟が意図しない本当に何かが起きそうな不穏なシーンが始まったりと観客の弄び方が絶妙なんですよね。

ホラー映画で多用される直接的で場当たり的な恐怖を描くのではなく、祖父母夫妻の家で起きる明らかな異変の数々のエスカレートが恐怖の姿形を段々と克明にしていくという、そうした恐怖を蓄積するような熟成形式の構成を90分の映画ながら展開にメリハリを効かせて器用に熟しているので非常に面白い。

また本作は主人公である姉弟の成長の物語としても上々のそれで、些かその形が直接的である過ぎるきらいはあるものの直面する恐怖と過去のトラウマが重なり、本作の恐怖を乗り越えることが過去のトラウマを払拭する為の禊とも言える話で、ジュブナイルとしてこの率直さはむしろ高評価のそれでした。
何より姉弟が等身大の子供として愛らしく、その本作を通しての成長を喜ばしく思える対象として確立されているのも大きかったですね。
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