Yoshishun

映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年のYoshishunのレビュー・感想・評価

3.5
“別れと再会”

先日鑑賞した『わたしの好きな歌』が傑作だったので、同じ感動作との呼び声高い本作を鑑賞。
何と約20数年ぶりの劇場版らしく、映画らしく中川大志、渡辺直美、ローラなど著名人が留学生5人の役を務めている豪華さ。
勿論、原作者さくらももこ自身が脚本を務め、また生前最後の単行本化された作品となっている。

始まってすぐは日曜夜6時にやっている内容と大差なく、音楽の先生による歌の宿題など『わたしの好きな歌』のオマージュぐらいしか楽しめない。また学級委員長の丸尾くんがいじめに近いレベルで蔑ろにされすぎたり、留学生の一部がステレオタイプな外国人(ブラジル人はずっと踊っている)でちびまる子ちゃんというコンテンツを思うとあまり教育上よろしくない。

しかし後半、アンドレアの祖父マルコと縁の深い店を探す辺りから少しずつ面白くなっていく。『わたしの好きな歌』でまる子は絵描きのお姉さんと別れ、再会を示唆する描写がない。作品の性質上、遠くに婿入りした娘はずっと婿の側にい続ける昭和の価値観が関係しているためだろう。
それに対し本作では、別れて終わりではなく、必ず再会できるという僅かながらの希望をもたせた締めくくりとなっており、前作との別れの意味合いと上手く対比されている。少々アンドレアの台詞がまる子たち以上にクサいのだが、現代の価値観へとアップデートされていることは間違いないだろう。

途中までは本当に日曜夜に流しても違和感がないので退屈してしまったが、前作との対比がみられる後半からは中々良かった。
さくらももこが不在の今新作映画は難しいかもしれないが、時代を超えてアップデートされるちびまる子ちゃん映画が今後新たに発表されるか気になるところである。
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