ナカムラ

シン・エヴァンゲリオン劇場版のナカムラのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

電車とはなんだろう?
移動手段としてしか看做さない私が不勉強ながら思うところによれば、それは二つの要素で構成されている。

その静止しているところをレンズに捉えていつまでも止まった時の中を楽しむ、噛み砕いて言えば一部の撮り鉄みたいなファン層と、決して後ろに進むことのない実質としての電車の性質だ。

電車の進行方向は不可逆なので、ファンの期待は叶えられない。だからこそいくつものあり得たかもしれない線路をファンが妄想し、議論ともつかない妄言を垂れ流し、まぁそうやって大きくなってきたのが超巨大型電車であるエヴァンゲリオンの正体でもあった。

本作でやっと電車は自ら動き出して、一応の車庫らしきものへと収まったというだけで、とても素晴らしいと私は思う。
「現実を見ろ!大人になれ!」ってメッセージを製作者が柔らかく伝える為の時間と観客が受け入れる為の時間としては、それでもまぁ長くかかりすぎたような気がするが。

それはそれとして、庵野監督お疲れ様でした。
もしあなたが体操選手であるとして、着地のポーズが他の選手たちと同じだと嗤う心ない観客がいたとしても、あんまりにジャンプしてからただ降りる選手ばかり観ているせいで、彼らはあなたが軽やかに空中で一回転してから、踏ん張りながら同じ体勢を取ったという事の価値には気付かないでしょう。