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シン・エヴァンゲリオン劇場版のimtanのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

アニメ、漫画、旧劇場版、序破Q視聴済。超ネタバレします。

ヱヴァンゲリオンから、エヴァンゲリオンに戻りましたね。そこからもエヴァンゲリオンという作品に決着をつける覚悟を感じます。

エヴァに限らず「シン・ゴジラ」でも庵野秀明という人物の心が少し軽く、穏やかになったような感じがします。旧劇場版と違って監督自身が大人に近づいたことで、世界が大きく変わったのだと。

今までのエヴァンゲリオン作品には日常生活を営む人がいませんでした。ただ、淡々とネルフや使徒、エヴァンゲリオンが映し出され続ける。作品としての完成度は抜群に高い。

今作は少し違います、「味噌汁」が出てきます。味噌汁ですよ!今までよくわからんプレートに盛り付けられたよくわからんペーストが味噌汁に進化しました。

この「味噌汁」の登場こそが本作の核です。その後も奥さんである庵野モヨコの絵本、科学特捜隊のシールといった監督自身の歴史やうちに秘めるものが散りばめられていました。サッポロポテト以外に「味噌汁」も食べてみたんじゃないでしょうか。田植えもしたんじゃなかろうか。

しかも食べ物を食べるシーンがあります。食事食べるんですよ、信じられますか。破の弁当シーンくらいでしか描かれなかった(なんなら食べてる印象もあまりない)食事シーンが温かい家庭付きで、意味を持って描かれました。

そんな前半ですが、中盤は庵野監督の見せ場です。「惑星大戦争」のBGMに乗せてヴンダーとNHGシリーズとの戦いはむせ返るような熱気です。どこか浮世離れしたガーゴイル……ではなく冬月も血の通った、思慮深いキャラクターとして描かれています。

そしてラスト、前半中盤の合わせ技です。家庭、人間の温かみの中でエヴァ同士が戦います。つまり「家族の喧嘩」ですね、親子喧嘩。エヴァンゲリオンを着て親子で殴り合うわけです。碇シンジが14年間生きてきた経験を父親に思い切りぶつけるんですが、実際は14年間よりずっと重い「新世紀エヴァンゲリオン」が始まったときからの25年間を視聴者にぶつけてきます。

序盤の田植えシーンや家庭の場面を、25年間かけてエヴァンゲリオンという作品にぶつける庵野秀明とどこか重なるような気がしました。おそらく、庵野秀明は大人になったのだと思います。序盤は大人の庵野秀明。中盤はのびのびとした子供の庵野秀明。最後は、きっと大人になる瞬間の庵野秀明が作ったのだと思います。監督無しに語れない本作は改めて庵野監督自身が作品に込めた思いの強さが感じられました。

最後はスーツを着た碇シンジとおもわれる人物が街を走っていきます。実写空撮は、劇場版名探偵コナンのエンディングみたいだな、と思ったのは内緒です。

エヴァンゲリオンは25年かけて完結しました。シンでは「大人になって、先へ進む世界」その旧劇、漫画、どれもが分かりやすさの差はあれど、ハッピーエンドに終わったわけです。

個人的な感想ですが、本作の「大人になった碇シンジ」にはどこか自嘲というか惨めさ、哀れな感じがします。そういった意味で庵野監督自身はどこかでまだ大人になるという事に悩みや不安のような、恐怖感を感じているのではないでしょうか。

エヴァは終わりましたが、彼の作品作りに対する葛藤はまだまだ続きそうです。
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