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LOVE【3D】のgnのレビュー・感想・評価

LOVE【3D】(2015年製作の映画)
3.1
ギャスパー・ノエが作ったブルー・バレンタイン 構成も時系列をバラバラに元彼女エレクトラとの出会いから別れを逆行して描いている そして元カノの事を思い出してクヨクヨしてるセックス狂の主人公
時系列を遡るとまでは行かずともやっている事はアレックスとそんなに変わってない

映画作家志望の主人公マーフィーという名前は自分の本名で、子どもの名前がギャスパー、エレクトラの元カレ(不倫相手)がノエという名前の配置にいちいち突っ込みたくなるけど、逆に映画を作る事の自由さに気付かされた
否が応でもこの映画が監督のパーソナルな話に見えるし、ああきっと若いころすごい好きな元カノがいたんだろうなと思わざるを得なかった

映画は冒頭オミと子どものギャスパーと暮らしてる正月の朝に、エレクトラのお母さんからエレクトラがいなくなったと電話を受ける所から始まる
そこからはずっとエレクトラとの思い出の回想シーン 思い出してはずっとクヨクヨするの連続 ちょっと昔のエレクトラと関係していた人に電話したりするけど(そこでその人との回想シーンが始まる)、映画の中でマーフィーは家から出ない ずっとエレクトラは良かった…と浸りまくる

冒頭から分かるように結局マーフィーはエレクトラと付き合っている時にお隣の17歳のオミとの間に赤ちゃんを作った事から、エレクトラと別れる事になる
また序盤にマーフィーの法則と言葉が出て来て、失敗するものは必ず失敗するという文字が映る きっとオミと子どもを作らなくてもマーフィーの法則のように別れる事にはなるって意味なんだろう 5次元でもセックス中毒でもマーフィーの法則は使える むしろギャスパー・ノエ自体がインターステラーから持ってきたのかな

とにかくエレクトラはマーフィーに手が届かないような女過ぎる 繊細かつユーモアがあって、性に興味深くて行動力がある ギャスパー・ノエの憧れの女性像が分かる ただお互いに付き合わない方がいいのも分かる

大体センスの良い女性はアーティスト気質なちょい悪オヤジと不倫するのは何なんだ ステレオタイプにも程があるぐらいに付き合い過ぎだろ

今回もギャスパーらしい映像が多い 要は極端な赤いが強い映像だったり、彩度高めの左右対称な映像みたいな前作までに撮っていたものが今回もあった アレックスで出て来た地下道っぽい所もあったし
ひたすらセックスを映していても、割とオリジナルな事はいつも通りやっている印象

ギャスパー・ノエは知らない世界とか生きている世界の裏の世界を撮っているように思う ある意味マトリックス的な世界を誰もが内面に持っているよと言うような 普通物語を作る人なら基本心に別世界を持っているはずなんだけどそれをどうにか映像化しようとする監督の1人で、自分が観る理由も観たことのないものを見せてくれそうという期待もある

今回も途中にいかにもなヒッピーお薬集団とキメてヤったり、まんまアイズワイドシャットのパーティーに行って乱交したり表向きにもマトリックスを映してた こういう所がギャスパー・ノエの分かりやすい所でとっつきやすい部分でもある

結局の所始終セックスを映してたし、一見するだけではポルノっぽい印象で終わるのも分かる ただ1人の男が家族を持つまでの経験と、映像的に性に孕む内面的な情動はしっかり描けていると思う そこから見える監督の抱える家族に対する思いも見えると大変すねと同情もする

アート系と言われてるけどそこまで芸術性を突き詰めてるというより分かりやすいものを作る監督の印象なので次作もまた観たい
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