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早すぎる、遅すぎる、のあのレビュー・感想・評価

早すぎる、遅すぎる、(1982年製作の映画)
4.0
やっぱりこの人達は、話と関係あるようで全く関係ない風景を撮って楽しんでいるのではと思いました。もう工場の出口から工女達が出てきて端に消えただけで驚く観客などいるまいに...

古典映画を愛する余り、可燃性フィルムと焼身自殺を図りかねないレベルの古風なシネフィルしか興奮しないような演出を延々とやり続けているのも、ここまでくると逆に清々しくなってきます。

こういう風に19世紀末に取り残された作品があっても良いんだし、全く真逆で、手ブレで「エモい」演出をするMVみたいな作品があっても良いんだし、改めて映画というものの懐の深さに乾杯です。

しかし本作は、エジプトのパートが長すぎる気はするものの、過去の革命からは「遅すぎる」ものの、未来の革命からは「早すぎる」風景が流れていると思えば興味深いものがありますし、豊かな背景の中こそ貧困が隠れていることをただ淡々と映すところになんとも言えない感覚がありました。物質的に豊かであるほど、富の寡占が起きてしまうんですね。

ただ、結局新興のブルジョワ経由で大衆が懐柔された後のエジプトで、ビルが聳え立っているところでティルトして、川の中にビルが蜃気楼みたいに揺れているところは流石に印象的でした。流石風景ばっか撮ってるだけあります。
あ