早すぎる、遅すぎる、の作品情報・感想・評価

早すぎる、遅すぎる、1982年製作の映画)

Trop tôt/Trop tard

製作国:

上映時間:14分

4.7

「早すぎる、遅すぎる、」に投稿された感想・評価

spacegomi

spacegomiの感想・評価

4.8
エンゲルスがカウツキーに宛てたフランスの農村部の貧困についての書簡と、エジプトにおける階級闘争の書をテクストとして採用し、それらをオフの声で朗読しつつ、それぞれの地をカメラが捉える、S=Hの最初のドキュメンタリー(非・劇映画)。彼らはドキュメンタリーという言葉を嫌うようだけど。もちろんアフレコではなく同時録音のため、英、仏、伊、独の4言語のバージョンが存在するらしい。仏語版で鑑賞(日本語テクストで補完)。

バスティーユ広場をぐるぐると回り続けるオープニングの長回しにいきなりやられた。画面から特定の解釈へと誘導する親切心はなく、観客にはただその地を眼差し、テクストと自然音に耳を傾け続けることを要求する。人々の抵抗する姿よりも、むしろ、その地に根ざす風景や生活を、距離を保ちながらゆっくりとしたパンで捉える。不意に現れる小鳥が画面を豊かにする。『工場の出口』オマージュでは、リュミエールには拾い得なかった音に拘り、人々が画面から立ち去ってもなお、オフの話し声や自然音をしぶとく捉え続けようとする。ロングショットとパン一辺倒だったカメラが前進する終盤のシークエンスも泣ける。農民が共産主義革命を起こすには早すぎたとするならば、そこに言葉がもたらされるのは遅すぎた。超絶大傑作。
暫定的な生涯ベスト1。冒頭のバスティーユ広場を周回しながら、読み上げられるエンゲルスのテクスト、後半のエジプトにおける工場の出口が忘れられない。政治と映画史の奇跡的とも呼べる邂逅。素晴らしいの一言です。