早すぎる、遅すぎる、の作品情報・感想・評価

早すぎる、遅すぎる、1982年製作の映画)

Trop tôt/Trop tard

製作国:

上映時間:101分

3.9

「早すぎる、遅すぎる、」に投稿された感想・評価

mingo

mingoの感想・評価

4.2
早すぎた革命と遅すぎた言葉、16mmにてついに鑑賞。冒頭のバスティーユ広場でなぜかリヴェットのスクラップアンドビルド映画を思い出した全く違うのに。「回る」という行為の、時間と物体における変化の面白さ異常。360度パンとフィックス長回しで延々と風景が映し出される中、第一部ではエンゲルスのカウツキー宛て書簡に基づいた18世紀末フランス農村の貧困状況が分析されつつ農村景観ショットが続き、第二部ではマルクス主義的階級史観に基づいた近現代のエジプトにおける農民蜂起の歴史が画面外で語られるわけだが、正直歴史のバックグラウンドはそこまで知る由もないのに行き交う人々を無限に観れちゃう何これ。メリーゴーランドという刹那的舞台装置、フィックス長回し、前進ショットとみせ方だけでもエポックメイキングなのにありとあらゆる映像の可能性が満ちている。観る=眼差し、テキストを聴く=言葉。これ以上無いくらいにデザインされている、これはドキュメンタリーでは無く「映画」だ。ユイレベストに挙げる人が多いのもうなづける大傑作。映画を観てると死ぬには早すぎるし、生きていくには遅すぎると感じるよ。物語後半の前進ショットには勇気をもらった…
ジガヴェルトフ集団の時期のゴダールのようなストローブ=ユイレの政治的マニュフェスト。第一部ではエンゲルスのカウツキー宛て書簡が朗読される。冒頭、快晴のパリの移動撮影が素晴らしい。カメラが低く画面の半分が路面なので疾走感がある。18世紀末の農村の貧困状況が朗読されて、おそらく厳密に当該の場所を選んで現在のフランスの村々や街並みの景色が映し出される。空と大地の比率が大胆な構図でゆっくりと画面がパンしていく。風が印象的だ。
第二部ではマフムード・フセインによる『エジプトにおける階級闘争』の近現代エジプトにおける農民蜂起の歴史が朗読される。こちらも快晴の下に当該の歴史的場所の現在の風景が提示される。第一部が風景だったのに対して第二部は人々の往来が描かれる。街道を自動車、自転車、牛、人が混雑と行き交う。圧巻は工場の出口を延々と描く長い固定ショットだ。リュミエール兄弟の「工場の出口」をぬけぬけと再現してしまって唖然となる。ストローブ=ユイレのカットは執拗に長い。街の巨大なアパートの群れをパンしながら人々の生活の息づかいの音がかぶる。ペドロ・コスタの作品がだぶってくる。街道をとらえるカットも長い。第一部の冒頭と対照的に終盤に途方もなく長い街道を前進する移動撮影がある。延々と前進していくカットにかぶる盛大な鳥の声が印象的だ。ナイル川が何度か挿入される。ラストカットは川岸の草に打ち寄せる波。まるでゴダールが撮影したみたいである。
ジャン=マリー・ストローブ&ダニエル・ユイレ監督作品。

第一部はフランス農村部の貧困状況についてのエンゲルスの書簡の読み上げとフランスの風景。第二部は、近現代のエジプトの農民蜂起についての読み上げと、現代エジプトの風景を映した作品。

第一部冒頭の車でぐるぐる回りながら周りを走っている車を撮っているシーンが面白い。周りの車との距離感が変わっていく。後はフランスの田舎を360度パンしながら延々と映していく。都市部も映され、リヨンの街並みが特に良かった。

第二部がとてもいい。被写体としてのエジプトが魅力的。風景、肥沃な土、人々の声、終始聞こえる鳥の声、そして牛車。映されるものと聞こえるもので豊かな画面だった。特に工場の入り口の人々が行き交う様を長回しで映したシーンがいい。リュミエール兄弟を感じさせる。
白黒で映されたエジプトの映像も良かった。
長回しの時間がほんとに長い。
「早すぎた、遅すぎた」

1982年製作のストローブ=ユイレ監督作品である。

本作はパリの広場をぐるぐると回るシーンから始まり、農村、エジプトの風景をひたすらに映し出す、風景ドキュメンタリー的な作りになっている。
そこに語りや音楽が入り、革命や階級制度について述べられているものの、映像に関して変化のほぼない、ゆっくりとした映像が流れるばかりで、非常に上級者向けの映画になっている。

本作の監督は2人で連名表記するドイツの監督であり、ヌーベルバーグの影響を受けたドイツの芸術運動ニュージャーマンシネマに属する監督たちで、特に難しい作品を作る2人として有名である。

その中でも本作はドキュメンタリーなのか、監督たちの歴史的思想なのかわからない、本当に難しい映画であった。しかし本作はある本で「死ぬまでに観たい映画ランキング」に入っているほど、映画通には有名な映画であるらしい。

観る機会のある方は、ぜひ観ていただきたい。

はっきり言って、眠くなります。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

2.5
【私は「早すぎる」の旗を挙げました】
WARNING:この感想には「タピオカ」が乱入してます。

なるべく避けたい監督ジャン=マリー・ストローブ&ダニエル・ユイレですが、mubiにて配信されていた且つ『死ぬまでに観たい映画1001本』掲載作品なので観ました。

本作はある種のコンセプチュアルアートだ。東京都写真美術館にでも飾っておくのが相応しいだろう。

今話題の「タピオカランド」で「タピオカンバッチ」という代物が売られている。缶バッチを黒く塗りつぶしただけ、1000年後の未来からこの代物を発掘したとしても何を象徴するのかわからないだろう。しかし、現にタピオカファンたちは300円の対価を支払い、購入、噂によれば完売したんだとか。

ただの黒い缶バッチに「タピオカ」という情報を与え、「タピオカランド」という空間によって缶バッチに生を与える。まさしくコンセプチュアルアートとして立派な代物だ。

『早すぎる、遅すぎる、』も似たベクトルを持つ、第1部はパン=回転中心の動き、第2部は前進方向の動きor固定中心のカメラワークであることを除けば、農村部や市井、木々を映しているだけだ。しかし、そこに18世紀フランスの市民の生活やエジプトの歴史を語ることで何気ない景色に奥行きが生まれる。

映像+ナレーションを通じて観客の脳裏に物語が生まれ、唯一無二の作品として仕上がるそこに美学の力点が置かれている。デレク・ジャーマンの『BLUE』やクロード・ランズマンのドキュメンタリーに近い、鑑賞者がストローブ=ユイレと共に紡ぎ出す物語だったのです。

しかし、ブンブンには専門外の歴史考察だったのでスタートラインにすら立てませんでした。

Désolé...
遅まきながらmubiでいくつか追っかけてたが今のところ一番面白い。VR絵画。構図が決まりすぎてて麻痺してくる。遠景だった人の群れが近付いてくるにつれ鮮明になり表情が見えてくるところ、絵画から映像に脱皮したかのようで衝撃的だった
どなべ

どなべの感想・評価

2.0
フランスとエジプトを例に、労働(あるいはそれ以下の)階級による革命について語られ、革命は起きても階級制度と強者による支配は繰り返されることを言っている(らしい、今回は特に字幕が難しかった)


映像は景色を映すが、カメラは固定され回転するだけ
これがどういう意図かは知らないけど、作られた構図で決められたものを映されるのとは多少違い、本当の意味でその場の景色を眺めている気分になる

>>一章(フランス)では回転、二章(エジプト)では回転・定点・前進ということで、革命の歴史に対応させたい感じはあるのかな

リュミエールのオマージュは最高にキモかった、フランス人のエッフェル塔より高いプライドが隠れてなかった
正直このシーンだけで嫌いになった
rain

rainの感想・評価

-
最近はアメリカやフランスの田舎風景に岐阜の風景を見いだしてしまう
No.678[「Deseret」の元ネタかな?] 70点

巷でよく特集上映が開催されていたストローブ=ユイレから唯一のエントリーであり、色んなとこで開催されていたから放置していたのに真面目に見始めると開催しないというマーフィの法則に引っかかって一気に鑑賞困難作品になってしまった。ワイズマン「高校」に似た境遇である。ストローブ=ユイレという名前から難しそうな印象を受けたのでアテネ・フランセ文化センターのサイトであらすじを確認した。

"風景が映し出される中、第一部ではエンゲルスのカウツキー宛て書簡に基づき、18世紀末フランス農村の貧困状況が分析され、第二部では、マルクス主義的階級史観に基づき、近現代のエジプトにおける農民蜂起の歴史が画面外で語られる。"

そうね、この通りだったよ(丸投げ)。彼らの映画にしては珍しく人間にスポットが当たらず、風景を延々と写している。そこに上記ナレーションが重なる。ベニング「Deseret」のカラー版かと思った。しかし映像が同作より断然美しいので文句なく満足した。内容はいつも通り6割理解だからいつか日本語字幕で見たい一作。

初ストローブ=ユイレには向いてなさそう。毎度初鑑賞でやらかすのは最早十八番である。
ryosuke

ryosukeの感想・評価

3.6
パン(行ったり来たりする)と固定カメラ長回しで風景を捉えるカットの繰り返し。独特の映像センスでなぜかその割には見ていられるのだが、正直単調過ぎて退屈してしまう部分も多かった。16mmフィルムで状態もあまり良くなかったため、画質がもっと良ければまた違った印象を受けたかもしれない。
フランスパートは冒頭のぐるぐると回転移動し続ける撮影が素晴らしい。フランス革命が結局はブルジョワの支配という帰結になったという語りが被せられ、画面の回転運動によって繰り返される平民たちの苦難が強調されているようである。(舞台はバスティーユ広場であるらしい)映像的にもとても面白いものとなっている。
パンで列車を追い越し、カメラが停止して列車が再び画面を追い越していくカット等も印象的。
エジプトパートはリュミエール兄弟の「工場の出口」のオマージュのようなカットも。ずっとロングショットばかりだったので、たまに人物が近くに来るだけでインパクトがある。ストローブ=ユイレの映画はミニマル過ぎて、見ていると普通のことが普通でなく感じられるようなことがある。
ドキュメンタリー調で撮ってある(子供が撮影者たちに挨拶したりする)が、人や車の動きが適切にコントロールされているようにも思える。ここらへんはどうなんだろうか。
のどかなフランスの風景に18世紀終盤の平民たちの困窮の実態の語りが重ねられる。乞食の多さに少し驚く。エジプトパートでも平和に暮らす人々を風景と共に捉えつつ、人々の抵抗の歴史を語る。
いまや平民たちの苦難の歴史は終わり、抵抗の不要な世界が訪れたのだろうか?
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