紅孔雀

ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐの紅孔雀のレビュー・感想・評価

4.0
アメリカ文学好きには堪えられない一作。
狂乱の20年代、ジャズエイジに活躍した名編集者サム・パーキンス(1884 生れ)と若き天才トム・ウルフ(1900年生れ)の、葛藤と友情の物語。ヘミングウェイ、フィッツジェラルド等パーキンスが見出したロストジェネレーションの作家達も登場して、思わずニヤニヤします。なお現実にパーキンスが見出した作家と言えば、他にリング・ラードナー、アースキン・コールドウェル、そしてかの探偵小説作家S.S.ヴァンダイン等々。まさに綺羅星の如きラインアップです。我が偏愛の批評家エドマンド・ウィルソン( 名評論『アクセルの城』の著者。小説家としても『愛国の血糊』が名高い)もいます。
パーキンスは、持ち込まれたトムの膨大な原稿を30万語から6万6千語(約2割❗️ですな)削除し、題名も『失われしもの』から『天使よ、故郷を見よ』に変えたが、そのお蔭で大ベストセラーに。カリスマ編集者の面目躍如たるエピソードであります。
パーキンスの子供は6人とも娘だったので、トムを男の子扱いした様子も描かれている。そしてトムのパトロンで愛人のアリーン・バーンスタイン(1882年生れ。演ずるはN.キッドマン)は2人の関係を嫉妬して最後には別れてしまうが、その去り際の一言がまた渋い。
「ひとりの時間が必要よ」
ここで歳の差を見れば、トムとアリーンが18歳差、トムとサムが16歳差となる。かくも歳上に愛されるのは、若き天才故の特権なのだろうか。
PS : 今にも壊れそうなフィッツジェラルドの妻ゼルダ役を、旬の女優ヴァネッサ・カービーが演じていて驚いた。M:Iでホワイト・ウィドウを活き活きと演じていたカービー嬢の変貌ぶりが凄い。
紅孔雀

紅孔雀