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裸の幼年時代のmat9215のレビュー・感想・評価

裸の幼年時代(1968年製作の映画)
4.0
主人公の少年、最初の里親一家、児童施設の人々、二番目の里親一家、あるいは里親の老いた母親。匿名性を求められたブレッソンの「モデル」とは違って、本作の登場人物たちは現地の現物として生々しくフィルムに定着されている。照明やカメラワークといった映画技術は劇映画でありながら、印象は限りなくドキュメンタリーである。登場人物たちだけでなく、北フランスの寒々しい気候や田舎町のたたずまいもしっかりと捉えられている。結婚式の場面などほとんど現地風俗のドキュメンタリーだ。悪さを繰り返す少年の異物感が際立っていて、螺旋階段のピットフォールに猫を落とす冒頭のエピソードから不穏な感じしかない。それを不幸な生い立ちなどに結びつけず、剥き出しで見せ続ける潔癖さに打たれる。更生施設から届いた少年の手紙を老夫婦が読み終えたところで唐突に打ち込まれる「FIN」も完璧なタイミングだ。
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