りっく

ビリー・リンの永遠の一日のりっくのレビュー・感想・評価

ビリー・リンの永遠の一日(2016年製作の映画)
3.7
イラクの英雄として祭り上げられる展開は、イーストウッドの「父親たちの星条旗」を彷彿とさせるが、個人の人生をアメリカの物語にすり替えようとする体質を批評的な目で批判するアンリーの意欲作。

ブラボー小隊にアメリカのショービジネス界の頂点とも言えるアメリカンフットボールからハーフタイムショーの出演を受け、またヒラリースワンク主演で映画化することを画策されるが、彼らはそのどれもを拒絶する。英雄を演じることも嫌がり、逆に喧嘩を売ってくる奴らには手を出す。一見調子に乗った若者のように見えても、効果的にフラッシュバックされる戦地の光景が、PTSDの深刻さを体感させる。

主人公は戦地から帰ってきた1週間で、愛する姉の手術費を出し、チアリーダーの恋人もできる。だが、それでも彼は戦地に戻ることを選択する。もはやそこが帰る場所になってしまった=アメリカは帰る場所ではなくなった、それこそがアメリカの最大の過ちであると断罪するかのように。
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