ビリー・リンの永遠の一日の作品情報・感想・評価

「ビリー・リンの永遠の一日」に投稿された感想・評価

とばり

とばりの感想・評価

5.0

このレビューはネタバレを含みます

新しい形の戦争映画だと思ったので高評化にしました。

この映画には戦争映画特有の緊張感や悲惨さ、そしてある種の感動シーンや説教臭さというようなものはありません。いかに兵士が消耗され、彼らが孤独に追いやられるか、という曖昧にされがちなラインを、極限まで「空虚」に描いた作品でした。

はっきり言って、映画的エネルギー(愛とか真実とか、痛みがあるけれどそれが力になる、といったようなエネルギー)があるシーンは、主人公とその姉の場面、そして亡くなってしまった軍曹との場面だけです。

そのほかは、全て虚構。いや事実としてすべて進んでいくんですけど、そこには何の中身もなく、たとえあったとしても未来につながるものがない。
それがとても気味が悪く、けれどその不気味さを描き出すのがとても上手かった。兵士が兵士しか信じられなくなっても無理ないな、と素直に思ってしまいました。兵士の結束といえば聞こえはいいけど、それはほかのコミュニティーとの断絶も意味しているから。
ラストの姉弟の別れには、そんな気持ちがせりあがってきてしまい、とてもやるせなくて久しぶりに複雑でつらい涙を流しました。
戦争への投資、平和のなかの消費。どんな理由があっても、兵士にはどちらも戦場でしかないのかも。

姉弟をはじめ主要キャストはとても素晴らしい演技でした。悲しくなるほどの空虚さのなかで、この映画が人間的な「美しさ」を保っていられるのは、彼らの繊細な演技力と、それをいかんなく見せた監督の手腕だと思います。満足感とは違うけれど、見る意味はあったと思える見事な作品でした。

余談ですが、ビヨンセ好きもさすがに胃が痛くなった…。普段、ああいうショーが好きだから余計にうしろめたいっていうか……。
千紗

千紗の感想・評価

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原作が積ん読のままなので先に映画を見てしまおうと思って。ブラボー隊の隊員のキャラが立ってて良かった。若年兵士の悪ガキさも。
ヒーローの素顔と国民の求めるヒーロー像の乖離について、語り過ぎず、兵士らに敬意を払うことを忘れず描いてるなあと思った。一度服役すると、戦場での生きている感覚とか仲間との連帯感のない日常に耐えられず、兵士達は戦場に戻って行くと言う話を聞いたことがあるけど、ヒーローだから戦場に戻らなくちゃ、という周囲からの重圧と罪悪感の板挟みか…それもそうか…。鮮明な映像で描かれる、煌びやかなハーフタイムショーに対するPTSDと舞台裏がなんとも印象的だと思った。

お姉さんが主人公に向かっていう、あんたが一番まともなのに、というセリフにアメリカの社会問題の根深さみたいなのを感じた。強いアメリカの亡霊を信じる父、家族の因習や世間体を気にする母、結婚して家庭があることに価値があるのであって政治について発言しない姉、交通事故で怪我をして恋人に捨てられた姉、姉のために服役しPTSD予備軍となった主人公。みんなそれぞれ病巣がある。みんな愛されている実感を得られなくて、家族で集まっても空虚な感じがするのかな。家族の微妙な雰囲気も黄ばんだ感じがあって良かったな。

DVDの特典も良かったな。撮影に用いた新技術?について監督の話があって良かった。
やっぱ映像がすごく綺麗。

19歳のビリー・リンは、イラク戦争の最中、仲間を助ける姿がたまたまカメラに収められ英雄とし名を馳せる。
一時的に帰国し凱旋ツアーで全米各地を回り地元に戻った彼は、次第に自分が英雄として扱われることに戸惑いを覚え始めるという話し。

で、ビリー・リンの心の変化をアメフトの試合のハーフタイムショーの中で描いていくという地味な映画です。

わたしは、そんなに戦争映画のドンパチが好きではないので、戦争を題材にしたこういう作品は好きな方。ただ、分かりにくかったなー。ビリー・リンの心の変化とか。。。
ハーフタイムショー辺りでやっとそういうことか。。。って思い始めたけれど、最後はまたよく分からなくなった。

1つ言えるのは、国を背負って戦う彼らの現実と国民達の現実は違う。特に現代の国を挙げて戦うというんではない戦争って、国民が常に直接的な危機にさらされているわけではないから、ある人には他人事にもなりえない。命を懸けて戦う兵士たちを祀り上げ英雄扱いするのも、それはある種のプロパガンダ的なものなんじゃないか。

自ら英雄になろうとしてなることって不可能で、結局は周りが英雄として祭り上げてるからその人は英雄と言われる。英雄は人が作り上げていくものだから、きっとそんなつもり無くして英雄と呼ばれた本人はビリーのように戸惑うのは当然だよね。

アン・リー監督はきっと凄くこのハーフタイムショーでのビリーを描きたかったからこの映画を作ったんじゃないかなと思うほどこのシーンは印象的だし見事だったと思う。

花火の爆音の中でただわけもわからず言われるままに敬礼して立ち尽くすまだあどけなさすら残る若き英雄ビリー・リンとその仲間の姿。ビヨンセ(ディスティニーズチャイルド)が踊るのを眼の前にしながら華やかなショーの見世物とも言えない、見世物の脇の飾り物みたいに扱われる兵士たち。そこで戦場の現実と今自分が立っている現実に混乱する。

まだ本当の恋すら知らないビリーが一目惚れして運命を感じるチアリーダーの女子が恋に恋する脳足りん女で胸糞悪かった。彼女が恋してるのはヒーローとの恋そのもので、本当のビリーなんて見てもいない。

結局彼の居場所は隊の仲間たちの愛に支えられた戦地しかないのかな。彼らにとっては戦地だけが現実なのかも。

色々考えさせられたけど、ちょっとすんなりは入ってこない映画だった。
アメリカってこんな国なのか……。もちろんこういう側面もあるって考えた方がいいんだろうけど。
さらっと流してたけど、チアリーダーのあの変な子との最後の台詞がすごく気持ち悪かった。
気持ち悪い映画だった。もちろん、良い意味でね。
Toku

Tokuの感想・評価

2.6
気になった言葉
何言ってるの、あなたはこの国の英雄よ。

気になった音楽たち
All Right Now/Free
And We Danced/The Hooters
Lose My Breath/Destiny’s Child
Soldier/Destiny’s Child
Get Ready/2 Unlimited
じえり

じえりの感想・評価

2.8
殺されないために殺すんです
それが戦争…

PTSD
まだみんな子供なのになぁ〜って感じ
Toka

Tokaの感想・評価

4.1
フィクションだけどフィクションじゃないんだよなー

周りが想像できないほどの体験を兵士はしてて。
周りと本人(兵士)の温度差がなんだかやるせないなー
台湾出身、『ブロークバック・マウンテン』で有名なアン・リー監督の作品。全米批評家協会賞を受賞した小説を映画化したものだそうで、実話ではない。劇場公開がなく、DVDおよびネット配信のみ(もちろんアメリカで大コケしたから)。
右寄りのメディア、FOXニュースのカメラに偶然写ったイラク戦地での救出活動により一躍、話題のヒーローとなった19歳のビリー・リン(ジョー・アルウィン)。仲間のブラボー分隊とともに一時帰国して、戦意高揚のためスーパーボールのハーフタイムショーで、当時大人気だったデスティニーズ・チャイルドといっしょにステージに立つことになる(代役なのでビヨンセらの顔は写らない)。周囲の大人たちはブラボー分隊のメンバーに敬意を払うフリをするが、本心では興味はなく、自分のビジネスになれば儲けものと思ってるだけ。過酷な戦場で心の傷を負い、PTSDを発症している若者たちがかわいそうになってくる。
スティーブン・スピルバーグ監督の名作『プライベート・ライアン』でも悲惨な兵士役を演じたヴィン・ディーゼルが、この映画でも似たようなポジションなのはおもしろい。
相変わらずトークがチープなアルバート(クリス・タッカー)、顔にキズがあっても美しいビリーの姉キャサリン(クリステン・スチュワート)、キリスト教原理主義者のチアリーダー、フェイゾン(マケンジー・リー)、映画化する際のスポンサーになろうとする会場のオーナー(スティーヴ・マーティン)もいい仕事をしている。しかしこれら戦場に行っていない者とは、根本的に話がかみ合わないビリー。オーナーがテキサスの礎となったアラモの砦で闘った勇士のストーリーを持ち出して、お前らもお国のために宣材になれと諭すが、キッパリと自分らしく反論するビリーに惚れる。
白人ですらバーガーキングで働くしかないような貧困、兵士へのヘイト、傲慢な富裕層といった映画として評価されにくいテーマを扱っているのはさすがです。
イラクでの勇敢な戦闘が称えられる若き兵士ビリー・リン。一時帰還し、スーパー・ボウルの特別ゲストに招かれた彼と部隊の長い1日を追う。高級リムジンに映画化企画、記者会見にチアガール、ディステニー・チャイルドのハーフタイムショウ。戦地とあまりにかけ離れたスタジアムでの出来事と並行して、ビリーの頭の中に去来するもの。姉と弟ビリーの見える傷見えない傷、陣地を奪い合う擬似戦争のアメフト・ショウと本物の戦争、それを物語として消費する映画という示唆的な対比構図はたぶん原作小説の通りなんだろうけど、更にこの映画もメタ的に思えてしまうのでなかなか複雑。考えるな、と言われた若き兵士は戦地を離れ考え続ける。家か戦場か。その思いもまったく一筋縄じゃない。
これはジョー・アルウィンの目の映画。蒼い瞳の中に空洞を宿し(その目が姉役クリスティン・スチュワートと似てる)、涙で赤くした目で彼方を見つめる。彼や怒れるボー・ナップやまだ幼い顔した仲間たちもやがて上官ギャレット・へトランドのようになり、最終的に運命を受け入れたヴィン・ディーゼル軍曹になるのだろうか。アレン・ギンズバーグの反戦詩"Wichita Vortex Sutra”が引用されてたけど、アン・リーの演出は兵士たちの心の旅に切々と情感を込めて寄り沿う。常に矛盾と欺瞞と犠牲を生むアメリカを凝縮した物語だった。そしてこれも“車の後部座席で終わる映画”。
DVDで。

実話を基にした話なのかな?と調べても特にそのようなことは記載されていないので(小説が原作らしい)フィクション作品なのだな。

軍曹を助けた行動が偶然映像に残ったために英雄に担がれた青年のお話。
アメリカは英雄を欲している国なのだな。

主人公の入隊した理由が愛国心ではなく姉ちゃんのためなのが泣ける。
姉ちゃんはクリステン・スチュワードだからな。仕方ないな。

ちょいちょい挟まれるPTSDの症状が痛ましい。
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