Tully

ドント・ブリーズのTullyのレビュー・感想・評価

ドント・ブリーズ(2016年製作の映画)
4.0
フェデ・アルバレス監督作。盲目の老人宅に侵入した若者たちを襲う恐怖を描いたスリラー。斬新な設定の秀作スリラー。大金が眠る盲目の老人宅に侵入した3人の若者。息を殺して大金の在り処を探る3人に対し、老人は研ぎ澄まされた聴覚を駆使して逆襲を図るという「不良3人組と盲目老人の攻防」をスリリングに描いています。展開的にはホラーorスリラー映画の典型である「調子に乗った若者が一転して恐怖に陥れられる」王道パターンですが、盲目の元軍人が相手という設定が新しいです。過去にはオードリー・ヘプバーン主演の「暗くなるまで待って」や、ミア・ファロー主演の「見えない恐怖」といった作品がありますが、それらでは盲目側のか弱い人間が恐怖を体験するお話なので、本作はその逆バージョン「暗くしてから殺せ」「見えないが殺せ」と言えます。健常者対盲人の単純な隠れん坊・追いかけっこのみならず、盲人の過去と自宅に隠された「秘密」を巡る新展開が物語に一層のスリルと恐怖を与えています。金目当てのチンピラに狙われる気の毒な盲人像から、狂気と復讐心に憑りつかれた異常者へとその印象が一転するさまは圧巻。正義不在の中で展開される、文字通り息を殺した密室劇に戦慄する作品です。盲目の元軍人を演じたスティーヴン・ラングの怪演にも圧倒されます。生気のない目つきと表情がこの世の者とは思えない特異な存在感を放っており、少ない言葉数の中響き渡る絶叫が何とも言えない不気味さを醸し出しています。
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