Tully

RUN/ランのTullyのネタバレレビュー・内容・結末

RUN/ラン(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「代理ミュンヒハウゼン症候群」 私に強烈なインパクトを与えた精神疾患。「シックスセンス」 の中でもストーリーの一部として使われて印象的であったが、本作はこの病気が主題。典型的な 「代理ミュンヒハウゼンの母親」 とその 「犠牲者の娘」 。母親が自分に動物用の薬を与えて両足の麻痺を起こさせていることを知った主人公の脱出劇。「脱出劇」 と言っても、自分の家から逃げ出すだけなのだが、両足が麻痺しているだけで、家の2階の1室から逃げ出すだけでここまで苦しいのかを思わせる描写と娘役の演技が素晴らしく、心拍数高めの緊張感が心地よい。母親が捨てた 「ワシントン大学の合格通知」 を見つけた時の主人公の表情と何かが切れたような 「癇癪行動」 は、母親との関係が完全に切れたことがよくわかるシーンで印象的。母親もいい感じのイカれ感で、敵役として良い恐怖感を与える。母親の異常感が弱いと言った意見もあるが、「代理ミュンヒハウゼン」 なので、表向きには辛い状況で頑張る母親を、子供の前でも献身的な母親を見せ、心の奥底で快感を得るという、ある種の普通感が、異常感を弱めている気がする。「代理ミュンヒハウゼン」 だけでなく 「新生児誘拐」 も加わって、本当の親子じゃないという後半の展開も、良いアクセントだったと個人的には感じた。ラストはどっちかなと思ったが、自分がやられたことを母親へやり返すというパターン。バッドエンドとしては、娘が自分の子供へも同じことをしてしまうという方が後味が悪いが、母親へやり返すのもなかなか意地が悪くて良い。個人的には前者が好きだが。90分の短い作品でテンポ良くサクサク観れ、緊張感も高めの良作だと私は思う。
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