Tully

セッションのTullyのネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

若手監督によるインディーズ的な位置付けの作品でありながら、そのジャンルにおいてはまったくもって新しく力強く、他のどんな音楽映画をも凌駕する見事な作品。音楽という、雄大なイメージがあるいちジャンルにおいて、ドラムスという部分に焦点をあて、敢えて音楽性を削ぎ、苛烈で理不尽なやり取りをさせることにより、主要2人のキャラクターの演技合戦と、見事なまでの心理合戦を作品内で展開させるというその手法はとても斬新で鮮烈。中でもやはり際立つのは 「マイルズ・テラー」 の心の奥底に怒りをこめながらドラムスを叩くという、どことなく孤独感に溢れ感情を押し殺した演技。対してさらに凄いのは 「J・K・シモンズ」 の理不尽さに満ち満ちた、怪演。これはそんじょそこらの悪役の演技の幅の中では見ることの出来ない、まさに完璧主義を体現している。その上で、このいちキャラクターを完全悪として描かずに、どことなく愛に満ちた雰囲気も醸し出すという、この絶妙なバランス。まさにベテランが為せる技。正直、こんなものを見せられたらけなす部分なんて何一つとしてない。今までチョイ役、脇役などを数多くこなし、気が付けば面白い映画には彼が出てたなぁと思う程度の俳優だったが、この怪演で文字通り覚醒した。演技も良くて、ストーリーも面白い。おまけに、劇中は力強いジャズで固められ、カメラワークもすこぶる秀逸。こんな映画が今まであっただろうか?無機質な演奏シーンが、逆にキャラクター2人を盛り立て、演奏をしているというのに、彼らが熱く罵声を飛ばし合っているように見える。そして最後の演奏で、いがみ合っていた2人が音楽という感覚の中で共鳴する。このラストは素晴らしい。総括してみれば、とても才能に溢れた傑作。音楽映画というジャンルの中で、あえてその雄大さや優しさに触れず、まったく逆の力強さと、苛烈さを前面に押し出した作りは、まるでスポ根映画を見ているような感覚に襲われ、鳥肌が立つ。絶対に見ておくべき一本であることは言うまでもない。
Tully

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